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文法第十六練習解答

文法第十六練習解答

 みなさん、おひさしぶりです。

 

 今回は、前回の練習問題の解答を示します。

問題確認

 まずは問題の確認から。

 

 前回の問題は、以下の通りでした。

 

練習問題1:次の省略された漢文を、訓読・翻訳してみよう。余力があれば、□部分の、省略された単語がなんなのかも考えてみよう。

(1) □有臣諌王然而王以□為不敬□厳罰之自此群臣為□不敢諌□矣。
(2) 道中有女招我於家女問□曰□将安往□応曰□不知□唯脚所進女聞之大笑。
(3) 言之則疎不言則怒笑則猜不笑則疑嗚呼難哉人間也。 疎…~を疎[うと]む。他動詞なのに目的語がない点に注目したい。 怒…~に怒[いか]る。日本語と違い、漢文の「怒」は怒りを向ける対象を直後に置くことが多い。つまり他動詞であることが多い。 猜…猜[うたが]ふ。 難…難[かた]し。難しい、の意。 人間[じんかん]…人の世。日本語の人間と違い、漢文の「人間」は人の世。人間の社会のことを言う。
(4) 嗚呼人性難解哉寿則悪之夭則慈之今生者疎已死者親嗚呼何死而後得人心。 性…性[さが]。性質。本性。 難解…解[かい]し難[がた]し。理解し辛い。 寿…[自動詞]寿[いのちなが]し。長寿である。 夭…[自動詞]夭[はやじに]す。若くして死ぬ。夭折[ようせつ]する。 悪…悪[にく]む。嫌悪する。 述語+者…述語する者。名詞となる。 親…[他動詞]~に親しむ。 而後…而[しか]る後[のち]に。~した後で。

 

練習問題2:次の書き下し文を、省略された漢文へと復元してみよう。

(1) 人有り男に問ひて曰く「汝嘗て竜を見るか。」と。男応へて曰く「未だ嘗て見ず。」と。人聞きて大いに之を嘲[あざけ]る。
(2) 道に一狼有り我を見るに即ち追ふ。我因りて木に登り、以て此より逃れんと欲す。狼 樹下に及ぶも、登ること能はず、遂に焉[ここ]に退去せり。 此より逃る…逃於此
(3) 之に勝らば則ち恨まれ、勝らずんば則ち侮らる。勝負或いは宜しく避くべきか。 或いは→「或」。副詞。「ひょっとすると」 宜しく~べし→「宜」。動詞の前に置き、「~する方がよろしい」の意を表す。品詞はよくわからない。副詞か助動詞か。とにかく動詞の前に置く。
(4) 去らば則ち之を想ひて悲しみ、在らば則ち之を見て恨む。嗚呼人心測り難きかな。 測り難い→「難測」。「難+動詞」で「~し難い」の意を表す。動詞は自動詞でも他動詞でもいい。

解答

 では答え合わせです。

 

練習問題1:次の省略された漢文を、訓読・翻訳してみよう。余力があれば、□部分の、省略された単語がなんなのかも考えてみよう。

(1) □有臣諌王然而王以□為不敬□厳罰之自此群臣為□不敢諌□矣。
解答
訓読:臣有り王を諌む。然而れども王(臣の諌王を)以て不敬と為し、(王 )厳しく之を罰す。此より群臣(此の事の)為に敢えて(王を)諌めず。
翻訳:王を諌める臣下がいた。しかしながら王は(臣下が王を諌めたのを)不敬とみなし、厳しくこれを罰した。これ以来臣下たちは(このことの)ために敢えて(王を)諌めなくなった。

解説:省略された単語を補えば、「□有臣諌王然而王以□為不敬□厳罰之自此群臣為□不敢諌□矣。」は「□有臣諌王然而王以為不敬厳罰之自此群臣為不敢諌矣。」といった感じ。最初の「□有臣」のところは、単に新しい人物を導入しているだけで具体的な場所は存在しないので、補いようがない。

 

(2) 道中有女招我於家女問□曰□将安往□応曰□不知□唯脚所進女聞之大笑。
解答
訓読:道中に女有り、我を家に招く。女(我に)問ひて曰く「(汝)将に安くにか往かんとする。」と。(我)応へて曰く「(我)(之を)知らず。唯だ脚の進む所のままなり。」と。女之を聞きて大いに笑ふ。
翻訳:道中に女が現れ、私を家に招いた。女は(私に)「(あなたは)どこへいこうとしているのか」と問うた。(私は)「(私は)(これを)知りません。ただ脚が進む通りに任せます。」と答えた。女はこれを聞いて大いに笑った。

解説:□の部分を補うと、「道中有女招我於家女問将安往応曰不知此事唯脚所進女聞之大笑。」という感じになります。
 なお、「唯A所他動詞」は、「唯だAの他動詞する所のままなり」とよみ、「ただAが他動詞する通りにする」という意味になります。

 

(3) 言之則疎不言則怒笑則猜不笑則疑嗚呼難哉人間也。
解答
訓読:之を言はば則ち疎まれ、言わずんば則ち怒らる。笑はば則ち猜はれ、笑はずんば則ち疑はる。嗚呼難きかな、人間や。
翻訳:言えば疎まれ、言わなければ怒られる。笑えば猜われ、笑わなくとも疑われる。ああ、難しいなぁ、人の世は。

 

(4) 嗚呼人性難解哉寿則悪之夭則慈之今生者疎已死者親嗚呼何死而後得人心。
解答
訓読:嗚呼人の性は解し難きかな。寿くんば則ち之を悪み、夭せば則ち之を慈しむ。今生ける者は疎まれ、已に死せる者は親しまる。嗚呼何ぞ死して而る後に人心を得る。
翻訳:ああ、人の性質は理解するのが難しいなぁ。長寿であればこれを嫌い、早死にすればこれを慈しむ。今生きている者は疎まれ、すでに死んでいる者は親しまれる。ああ、どうして死んだ後で人心を得るのか。

解説:「今生ける者」「已に死せる者」は、「今生くる者」「已に死する者」と読んでもよい。というかそう読むのがスタンダード。

 

練習問題2:次の書き下し文を、省略された漢文へと復元してみよう。

(1) 人有り男に問ひて曰く「汝嘗て竜を見るか。」と。男応へて曰く「未だ嘗て見ず。」と。人聞きて大いに之を嘲[あざけ]る。
解答:有人問男曰汝嘗見竜乎男応曰未嘗見人聞而大嘲之。

 

(2) 道に一狼有り我を見るに即ち追ふ。我因りて木に登り、以て此より逃れんと欲す。狼 樹下に及ぶも、登ること能はず、遂に焉[ここ]に退去せり。 
解答:道有一狼見我即追我因登木欲以逃於此狼及樹下不能登遂退去焉。
解説:「以」は木に登るを以て、の略。「(木に登るを)以て此より逃れん」と「欲」したのだから、語順は「欲以逃於此」となる。

 

(3) 之に勝らば則ち恨まれ、勝らずんば則ち侮らる。勝負或いは宜しく避くべきか。 
解答:勝之則恨不勝則侮勝負或宜避乎。

 

(4) 去らば則ち之を想ひて悲しみ、在らば則ち之を見て恨む。嗚呼人心測り難きかな。 測り難い→「難測」。「難+動詞」で「~し難い」の意を表す。動詞は自動詞でも他動詞でもいい。
解答:去則想之悲在則見之恨嗚呼人心難測哉。

終わりに

 以上にて練習問題もおしまいです。これにてようやく漢文の文法の勉強も終わりですね。

 

 次回からは、文のルールではなく、句のルール、つまり句法について勉強します。

 

 ではまたいつか。再見。

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