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詞法第二:疑問詞

詞法第二 疑問詞

 みなさん、こんにちは。

 

 今回は、早くも詞法の最終回です。疑問詞について勉強します。

疑問詞とは?

 疑問詞は、疑問詞疑問文を作る際に必要とされる言葉を指して言う言葉です。

 

 ですがその実態は、普通の品詞と同様に、名詞、形容詞、動詞、副詞、数詞などに色々分かれるので、その種類ごとに使い方は違います。

 

 今回はその使い方を覚えましょう。

 

1.疑問名詞

 疑問詞のうち、名詞の役割を果たす者を当サイトでは「疑問名詞」と称しています。

 

 疑問名詞には、「誰」「何」「孰」「安」などがあります。

 

例文1:今在此地。

訓読:今誰か此の地に在る?

翻訳:今は誰がこの土地にいますか?

 

例文2:滅此国矣?

訓読:何か此の国を滅ぼす?

翻訳:なにがこの国を滅ぼしたのだ?

 

例文3:我与汝、足王此国?

訓読:我と汝と、孰れか此の国に王たるに足らん?

翻訳:私とお前とでは、どっちがこの国で王であるに値するだろうか?

 

 上の例文中の疑問詞は、何れも文の主語になっていますね。このことからも、名詞であることが分かるかと思います。

 

なお、「安」および「誰」「何」「孰」が目的語として使われる例については、文法第十一をご覧ください。疑問倒置を起こすので、特別に文法の方で詳しく扱っています。

 

2.疑問形容詞

 疑問詞のうち、名詞の前に置いて名詞を修飾する働きをするものを「疑問形容詞」と当サイトでは呼んでいます。

 

 疑問形容詞には、「何」「何如」などがあります。

 

例文1:男恨我?

訓読:何れの男か我を恨む?

翻訳:どの男が私を恨んでいるのだ?

 

例文2:何如王滅国。

訓読:如何なる王か国を滅ぼす?

翻訳:どのような王が国を滅ぼすのだ?

 

 「何」は、「なん」「いず-れの」と訓読して「どんな」「どちらの」の意を表し、「何如」は「いか-なる」と訓読して「どのような」の意を表します。

 

 なお、「疑問形容詞+名詞」で構成された名詞句は、結果的に「疑問名詞」扱いとなり、疑問倒置を起こすことができます(必ず起こるとは限らないのは、文法第十一で述べた通り)

 

例文:汝欲何女娶?=汝欲娶何女

訓読:汝 何れの女をか娶らんと欲する?

翻訳:お前はどの女を娶ろうとしているのだ?

解説:本来の語順は右側の「汝欲娶何女?」の方。ただ、古い時代の漢文ではよく「汝欲何女娶?」の語順となる。

 

3.疑問動詞

 疑問詞のうち、動詞の役割を果たすものを、当サイトでは「疑問動詞」と名付けています。

 

 疑問動詞には、「如何」「何如」の二つがあります。

 

n  如何…他動詞。「-目的語-」の形で用い、「目的語を如何[いかん]せん」と訓読し、「目的語をどうすればよい?」「目的語をどうしようか?」の意味を表します。

n  何如…自動詞。「(主語)~何如。」の形で用い、「(主語は)~如何[いかん]。」と訓読し、「(主語は)~どうであるか?」の意味を表します。

 

例文1:我

訓読:我 汝を如何せん

翻訳:私はお前をどうしたらよいだろう

 

例文2:我が国は何如

訓読:我が国は何如

翻訳:私の国はどうだ

 

 「如何」「何如」の文例については、超速理解漢文法よりも、以前作った「初級篇」の30の方が豊富です。あっちのは訓読は付けてありませんが、多分ここまで読み進めてくださった皆様なら自分で書き下せると思いますよ。

 

 

4.疑問副詞

 疑問詞のうち、副詞の役割を果たすものを当サイトでは「疑問副詞」と呼んでいます。

 

 疑問副詞には、「何」「安」「悪」「焉」(いずれも「どうして」の意味)等等いろいろあります。

 

 疑問副詞については、文法第十一で詳しく説明していますので、そちらをご覧ください。

 

 

5.疑問数詞

 疑問詞のうち、数詞の役割を果たすものを当サイトでは「疑問数詞」と呼んでいます。

 

 疑問数詞には、「幾」「幾何」がこれに属します。これらは数詞ではありますが、用法は極めて限定的のようです。

 

n  幾…「幾-名詞」という名詞修飾の形式で用います。訓読は「幾[いく]-名詞」。普通の数詞と同じで、「幾-名詞」は補語としての機能もあります

n  幾何…「述語-幾何」の形式で、補語として使います。「述語する/なること幾何[いくばく]ぞ?」と訓読し、「どれくらい述語。」の意を表します。

 

例文1:天下之人知之?

訓読:天下の人か之を知らん?

翻訳:天下の人のうち、がこれを知っているだろうか?

 

例文2:嗚呼離於祖国

訓読:嗚呼、祖国を離るることぞ?

翻訳:ああ、祖国を離れているだろうか?=ああ、祖国を離れてから何年になるだろう?

 

例文3:天下恨王幾何

訓読:天下の王を恨むこと幾何ぞ

翻訳:天下の人々は王をどれくらい恨んでいるだろうか?

 

補足:なお、「幾」には、以下のような決まり文句もあります。

 

n  無幾…「幾[いくばく]も無[]し」で、「いくらもない」の意味。時間的な意味にも数量的な意味にもなります。

n  未幾…「未[いま]だ幾[いくばく]ならずして」で、「まだいくらもならないうちに」=「まもなく」の意味を表します。

 

例文1:祖国滅亡、生者無幾

訓読:祖国滅亡し、生くる者は幾も無し

翻訳:祖国は滅亡し、生きている者はいくらもいない

 

例文2:我得名誉、無幾()失之。

訓読:我名誉を得るも、幾も無くして之を失ふ。

翻訳:私は名誉を得たが、いくらもならないうちにこれを失った。

解説:「無幾()」はこのように、時間的に「いくらもならないうちに」「まもなく」の意味も表します。

 

例文3:我得名誉、未幾()失之。

訓読:我名誉を得るも、未だ幾ならずして之を失ふ。

翻訳:私は名誉を得たが、まだいくらもならないうちにこれを失った。

 

終わりに

 以上で疑問詞の勉強も終わり。

 

 次回からは、超速理解漢文法の最終章、「語法」に入ります。

 

 まぁ語法は1課で終わるんですけどね。

 

 ともあれこの辺にて。再見。

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