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文法第二:副詞

超速理解漢文法:文法第二 副詞

 みなさん、こんにちは。造言です。

 

 今回は漢文の副詞について学んでいきます。

副詞の位置の概要

 漢文では、副詞の置かれる位置が、副詞の種類に応じて三通りあります。
@文頭
A主語の後
B述語の前

 

 今、これを基本文型に挿入した形に直すと、以下のようになります。
@副詞-主語-述語。
A主語-副詞-述語。
B主語-副詞-述語。

 

 ABは図的には同じですが、前置詞句などその他の微要素が挿入される時に違いが出てきますので、Aは「主語の後」、Bは「述語の前」というように、その違いを意識はしておいてください。

 

 以下、@の位置におかれる副詞を「文頭副詞」、Aの位置におかれる副詞を「主後副詞」、Bの位置に置かれる副詞を「述前副詞」と命名し、それぞれの詳細な説明に入っていきます。

文頭副詞

文頭副詞の文型

文型:副詞-主語-述語。

例文:明日我見父母。

訓読:明日[めいじつ]我 父母[ふぼ]を見る。

訳:明日私は父母を見る。

 

 ご覧の通り、文頭に置かれる副詞のことです。文頭副詞としては、「今」「昔」「昨」「古」「今日」「明日」「今年」「去年」等時間名詞全般、そして「蓋」「恐」「疑」「惜」「不幸」「幸而」等の一部の副詞等があります。

 

 時間名詞は無限にありますが、文頭に置かれる副詞は、それほど多くはありませんので、それらは軽く暗記してしまうのが一番だと思います。以下に意味と訓読を書いておきますので、覚えておいてください。

蓋…訓:「ケダ-シ」 意:「おそらく」
恐…訓:「オソ-ラクハ」 意:「おそらくは」
疑…訓:「ウタガ-フラクハ〜カト」 意:「おそらくは〜ではないか」
惜…訓:「ヲ-シムラクハ」 意:「惜しいことに」
不幸…訓:「フカウ-ニシテ」 意:「不幸なことに」
幸而…訓:「サイハ-ヒ-ニシテ」 意:「幸いなことに」

 

練習問題1:次の文頭副詞を含んだ漢文を訓読・翻訳してみよう。

(1)明日汝死。
(2)昨日我見其女。
(3)不幸我喪父母。 喪…失う。死に別れる。
(4)幸而倭国島国也。

 

練習問題2:次の漢文訓読体を、文頭副詞を含んだ漢文に復文してみよう。

(1)蓋し王 之を殺さん。
(2)惜しむらくは 国王暗愚なり。
(3)今日 将 臣に糧を配る。 将…将軍。
(4)古[いにしへ] 神 世を統ぶ。

主後副詞

主後副詞

文型:主語-副詞-述語。

例文:人知之。

訓読:人之を知る。

訳:人はみなこれを知っている。

 

 主後副詞は、主語の後ろに置かれる副詞のことです。「皆[ミナ]」「亦[マ-タ]」「独[ヒト-リ]」「悉[コトゴト-ク]」「並[ナラ-ビニ]」など、その主語が何人いるのかを示す副詞がこれに属します。

 

また、「已[スデ-ニ]」「嘗[カツ-テ]」「常[ツネ-ニ]」など、時間を表す副詞も主後副詞に属します。…時間を表す「副詞」ですよ?「名詞」ではありません。時間名詞ではないのです…。

 

練習問題3:次の主後副詞を含んだ漢文を訓読・翻訳してみよう。

(1)我亦疑之。
(2)王独信愚臣。 愚臣…愚かな臣。馬鹿な家臣。
(3)倭已改名。 改名…名を改む。
(4)神嘗統人。 統…統[す]ぶ。統治する。

 

練習問題4:次の漢文訓読体を、文頭副詞を含んだ漢文に復文してみよう。

(1)官軍悉く賊を破る。 破る…撃破する。
(2)民衆並びに王を敬ふ。
(3)倭も亦た国名なり。
(4)暴君常に民を虐[しいた]ぐ。

述前副詞

述前副詞

文型:主語-副詞-述語。

例文:群衆笑。

訓読:群衆大いに笑う。

訳:群衆は大いに笑った。

 

 述前副詞は、述語の前に置かれる副詞です。「大[オオ-イニ]」「速[スミ-ヤカニ]」「頗[スコブ-ル]」「甚[ハナハ-ダ]」など、述語を修飾する副詞全般がこの述前副詞に属することになります。おそらく副詞の中でもっとも種類の多いものとなるでしょう。

 

練習問題5:次の述前副詞を含んだ漢文を訓読・翻訳してみよう。

(1)賢臣屡叛君。 屡…屡[しばしば]。 叛…叛[そむ]く。反逆する。
(2)子女甚悪其父。 悪…悪[にく]む。嫌悪する。嫌う。
(3)我大罵之。 罵…罵[ののし]る。
(4)使速告之王。 使…使[つか]ひ。使者。

 

練習問題6:次の漢文訓読体を、述前副詞を含んだ漢文に復文してみよう。

(1)王大いに之を重んず。 重んず…重用する。重視する。
(2)老翁早く覚む。 老翁…年老いた爺さん。
(3)汝頗る色を好む。 色を好む…女を好むということ。
(4)男甚だ怠惰なり。

補足@

副詞は一文に複数挿入することができます。

例1:今日皆速

訓読:今日[きんじつ]皆速やかに行く。

訳:今日人はみな速やかに歩く。

 

例2:今者日本蓋已亦大国

訓読:今者[いま]日本蓋し已に亦た大国なり。

訳:今では日本もおそらくはすでに大国である。

 

補足A

 主後副詞「皆」「並」「悉」「独」などは、目的語が何人なのかも表すことができます。主語が何人なのかを表しているのか、それとも目的語が何人なのかを表しているのかは、文脈に依存します。

 

例1:彼愛其妻。

訓読:彼独り其の妻を愛す。

→訳1:彼だけはひとり自分の妻を愛している。(これは主語「彼」に主後副詞「独」がかかっていると解釈した時の訳です。)

→訳2:彼はひとり自分の妻だけを愛している。(これは目的語「其妻」に主後副詞「独」がかかっていると解釈した時の訳となります。)

 

例2:彼等殺其逆賊。

訓読:彼等其の逆賊を殺す。

→訳1:彼らみんなが其の逆賊を殺した。(「皆」が「彼等」を修飾すると解釈した時の訳)

→訳2:彼らは其の逆賊みんなを殺した。(「皆」が「其逆賊」を修飾すると解釈した時の訳)

 

補足B

 文頭副詞も、実は一般に、主語の後ろに置くことができます(例1・例2)。但し、「今者」「古者」など、「時間名詞一字+者」で構成された時間名詞は必ず文頭に置かれますので、この例外は当てはまりません(例3・例4)。あと、「惜」も主語の後ろに置けるか不明です。

 

例1:我大笑=我大笑

訓読:[きのふ]我大いに笑ふ。=我大いに笑ふ。

訳:昨日私は大いに笑った。=私は昨日大いに笑った。

 

例2:倭国当時已自称日本。=倭国当時已自称日本。

訓読:疑ふらくは倭国当時已に日本を自称す。=倭国疑ふらくは当時已に日本を自称す。

訳:おそらく倭国は当時すでに日本を自称していたのではないだろうか。=倭国はおそらく当時すでに日本を自称していたのではないだろうか

 

例3:日本亦小国。 ×:日本亦小国。

訓読:[いにしへ]日本も亦た小国なり。

訳:古代では日本もまた小国であった。

 

例4:俗皆善記字。 ×:俗皆善記字。

訓読:[いま]俗皆善く字を記す。

訳:今では世の人は皆上手に字を記す。

 

練習問題7:次の複数の副詞を含んだ漢文を訓読・翻訳してみよう。

(1)古者日本亦小国也。
(2)昨夜男蓋常独想女。 想…想[おも]ふ。
(3)惜王已皆誅賢臣。 誅…誅[ころ]す。誅殺する。
(4)此年疫病復大流行。 大…大いに。

 

練習問題8:次の漢文訓読体を、複数の副詞を含んだ漢文に復文してみよう。

(1)今民疑ふらくは已に皆床に就くかと。
(2)蛮族恐らくは嘗て悉く我が国土を侵す。
(3)蓋し今日民も亦た甚だ之を悔ゆ。
(4)惜しむらくは王今日独り財を愛す。

補足C

 漢文では、打消の「非」「不」「未」等も副詞です。「非」は名詞述語を打ち消し、(例1)、「不」「未」の二つは動詞述語を打ち消します(例2・例3・例4)。
「不」「未」の二つは、更に動詞を修飾する述前副詞をも含めて打ち消すことができます(例5・例6)。…まぁ、端的に、打消の副詞は「打ち消すものの前に置く」とだけ覚えてもいいかもしれません。

 

例1:彼蓋倭人。

訓読:彼は蓋し倭人に非ず

訳:彼はおそらく倭人ではない。

 

例2:此国之民皆笑。

訓読:此の国の民は皆笑は

訳:この国の民はみんな笑わない。

 

例3:汝知其意。

訓読:汝は未だ其の意を知ら

訳:お前はまだその意味を知っていない。

 

例4:嗚呼父母終教子仁徳。

訓読:嗚呼[ああ]父母終[つひ]に子に仁徳を教へ

訳:ああ、父母はとうとう息子に仁徳を教えなかった。

 

例5:我亦知其意。

訓読:我も亦た[ことごと]くは其の意を知ら

訳:私もまた徹底的にはその意味を知っていない。

説明:「不尽知其意」は「尽く其の意を知る」を打ち消すから、「尽く其の意を知る」わけではない、という程度の意味になる。なので訳も、「徹底的には〜ない」という部分否定となる。

 

例6:汝解王之計略。

訓読:汝未だ詳らかには王の計略を解せ

訳:お前はまだ詳細には王の計略を理解していない。

説明:「未詳解…」は、「詳らかに…を解す」を打ち消すわけだから、「詳らかに…を理解している」わけではない、という程度の意味となる。

 

[参考]ちなみに、「不」「未」の二つが「述前副詞」+「述語」を打ち消す時は、結果的に「尽くは…ず」「詳らかには…ず」のように、意味を部分的に打ち消す文意になります。故に日本語では、このような文型を特に「部分否定」などと呼びます。

 

練習問題9:次の述前副詞を含んだ漢文を訓読・翻訳してみよう。

(1)使未到倭。 到…到[いた]る。到着する。
(2)惜女常不笑。
(3)今者日本疑已非小国。
(4)明君不常信臣言。 明君…聡明な君主。明は聡明、賢明など「賢い」の意。

 

練習問題10:次の漢文訓読体を、打消の副詞を含んだ漢文に復文してみよう。

(1)古者[いにしへ]王必ずしも民を慈しまず。
(2)男蓋し未だ女を娶[めと]らず。 娶る…妻にする。
(3)我が国の王は疑ふらくは明君に非ざるかと。 我が国の王…我国之王
(4)暗君終に賢臣を用ひず。

 

終わりの言葉&参考

 以上にて副詞の説明は終わりです。

 

 それではみなさん、ごきげんよう。

 

[参考]漢文では、日本語と違って、副詞を修飾する副詞というものは登場しません。もし副詞で副詞を修飾したいなら、以下のような手順を踏む必要があります。

 

 図で表せば、以下のような手順です。
@「主語-副詞1-副詞2-述語」と言い表したい。
→この時、副詞1は副詞2を修飾。副詞2は述語を修飾する。

 

A但し、漢文ではこのような文は見ない。
→語順を「主語-述語-副詞1-副詞2」にして、漢文として正しい文にする。

 

例1:

@「父母甚丁寧教子女仁道。」と言い表したい。

訓読は「父母甚だ丁寧に子女に仁の道を教ふ。」

→この時、主語=父母、述語=教子女仁道、副詞1=「甚」、副詞2=「丁寧」。

 

A漢文では、このような副詞が副詞を修飾する文は使われない。

→「主語-副詞1-副詞2-述語」→「主語-述語-副詞1-副詞2」より、「父母甚丁寧教子女仁道。」→「父母教子女仁道甚丁寧。」と言い換える。

訓読は、「父母子女に仁の道を教ふること甚だ丁寧なり。

 

例2:

@「此国頗厳罰罪人。」と言い表したい。

訓読は「此の国は頗る厳しく罪人を罰す。」

→この時、主語=此国、述語=罰罪人、副詞1=頗、副詞2=厳、である。

 

A漢文では、副詞が副詞を修飾することはない。

「主語-副詞1-副詞2-述語」→「主語-述語-副詞1-副詞2」より、「此国頗厳罰罪人。」→「此国罰罪人頗厳」と言い換える。

訓読は、「此の国罪人を罰すること頗る厳し。」である。

 

 ちなみに、この文は、文の構造としては第5課で習う「主語-述語-補語。」というものに当たります。まぁ、漢作文時の参考にしていただければと思います。

 

 お話しは以上です。それでは今度こそ、ごきげんよう。

 

 

 

 

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