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文法第四:助動詞

超速理解漢文法 文法第四:助動詞

 みなさん、こんにちは。

 

 今回は、漢文の助動詞の位置について勉強します。

助動詞とは?

 助動詞とは、動詞を目的語として動詞の意味を補足するものを言います。漢文では、助動詞もまた基本文型に挿入することができます。

 

 助動詞の挿入位置は、述語の前のみとなります。基本文型に挿入した形に直すと、以下のようになりますね。

 

文型:主語-助動詞-述語

 

 以下、具体的な例を見て行きましょう。文の構造は()内に記してありますが、副詞や前置詞句などの今回の主題ではない微要素についても()で括ってあります。

 

例1:倭人。(「主語-助動詞-述語」)

訓読:汝[まさ]倭人なるべし。

訳:お前はきっと倭人であろ

 

例2:()君主()厳然(於下)((副詞)-主語-(副詞)-助動詞-述語-(前置詞句))

訓読:(凡そ)君主は()須らく(下に)厳然たるべし。

訳:一般に、君主とはみな下々の者に対して厳然としている必要がある

 

例3:(昔者)武士(以刀)討無道。((副詞)-主語-助動詞-(前置詞句)-述語」)

訓読:(昔者)武士(刀を以て)無道を討つべし

訳:(昔は)武士は(刀で以て)道徳の無い者を討伐することができた

 

例4:賢師説人徳(以一言)(「主語-助動詞-述語-(前置詞句))

訓読:賢師能く人に徳を説く(に一言を以てす)

訳:賢い先生は一言で人に徳を説法することができる

 

文中の「[応[まさ]に〜べし]」「[須[すべか]らく〜べし][※〜須[もち]ふ]」「[〜べし]」「[能[よ]く〜][※〜能[あた]ふ]」は並びに助動詞に属します。その他、「[当[まさ]に〜べし]」「[〜んと欲す]」「[〜に足[た]る]」「[〜を得[う]]」なども、まぁ助動詞と言ってよいでしょう。
※:「能」を「能ふ」と読んでいいのは、「不能[あたはず]」「未能[いまだ〜あたはず]」など「不」「未」が前につく時ときだけです。同時に、「須」を「須[もち]ふ」と読むのも、「不須[もちひず]」「未須[いまだ〜もちひず]」などの否定文と、「何須[なんぞ〜もちひん(や)]」などの疑問・反語文のときだけです。日本語の問題ですが、注意しましょう。

 

練習問題1:次の助動詞を含んだ漢文を訓読・翻訳してみよう。

(1)彼当中華之人。 当…当然…はずだ。きっと…だろう。
(2)我亦欲行。
(3)男遂得見妻。 遂…遂に。
(4)賢王能分賢愚。 分…区別する。分別する。 賢愚…賢いものと愚かなもの。

 

練習問題2:次の漢文訓読体を、助動詞を含んだ漢文に復文してみよう。

(1)彼の王も亦た応に之を知るべし。
(2)子女は進むべし。
(3)父母須らく子に仁を教ふべし。
(4)我 暴君ならんと欲す。

 

補足@:助動詞を否定したいとき

 助動詞を否定したいときは、動詞述語を打ち消す副詞「不」「未」を助動詞の前に置けばいいだけです。

 

例1:汝王。

訓読:汝当に王なるべから

訳:お前は当然王であるべきではない

 

例2:今民並帯兵。

訓読:今民並びに兵を帯ぶべから

訳:今では民は皆兵器を携帯することができない

 

例3:愚者教人学。

訓読:愚者は人に学を教ふること能は

訳:愚か者は人に学問を教えることはできない

 

例4:父母叱子女。

訓読:父母子女を叱らんと欲せ

訳:父母は子供を叱ろうとしなかった

 

練習問題3:次の助動詞を含んだ漢文を訓読・翻訳してみよう。

(1)汝不須憂。 憂…憂える。心配する。
(2)我不能解中国之言。 解…解[と]く。解[かい]す。理解する。
(3)彼不応倭人。
(4)男終不得見妻子。 終…終[つひ]に。最後まで。

 

練習問題4:次の漢文訓読体を、助動詞を含んだ漢文に復文してみよう。

(1)王 臣を信ずること能はず。
(2)父母当に子女に謙[へりくだ]るべからず。 謙る…謙[自動詞]。
(3)賢者は多言を以て之を説くを須ひず。
(4)汝 人を殺すべからず。

 

参考:之を説く…日漢文では他動詞には目的語が必要で、且つ目的語の省略というのも普通ありません(小説など具体的な文脈がある場合は例外)。
しかしながら真理や一般論を述べる際には、「なにを」に当たる部分が特にない場合があります。そんなときは「之」という字を形式的に入れて、文法的に正しくするのです。まぁ英語の意味のないときの他動詞の目的語「it」と同じですね。

補足A:「可」の特殊文型

 「可」には特殊な文型があります。「主語-可-述語。」の時、主語が、述語中の他動詞の目的語となる場合があるのです。この時、「可+述語」は主語の属性を明らかにするものとなっています(例1・例2)。

 

 また、この文型では、主語は「前置詞」の目的語である場合もあります(例3)。すなわち、「主語-可-前置詞-述語。」の時、主語=前置詞の目的語、という関係になる場合もあるということです。

 

 この文型に遭遇した際には、主語が可より後ろの「他動詞の目的語」なのか、それとも可より後ろの「前置詞の目的語」なのかを、考えてみることをお勧めします。

 

例1:軟水(「主語--他動詞」。主語=他動詞の目的語、の関係。)

訓読:軟水飲むべし

訳:軟水は飲むことができる

説明:主語「軟水」=他動詞「飲む」の対象すなわち目的語。主語「軟水」は、性質として「可飲」=「飲むことができる」わけです。

 

例2:硬水不(「主語-否定副詞--他動詞」。主語=他動詞の目的語。)

訓読:硬水飲むべからず。

訳:硬水は飲むことができない。

説明:主語「硬水」=他動詞「飲む」の対象すなわち目的語。主語「硬水」は、性質として「不可飲」=「飲むことができない」わけです。

 

例3:刀以斬人。(「主語--前置詞-述語」。主語=前置詞の目的語、の関係。)

訓読:刀は以て人を斬るべし

訳:刀は(それで)人を斬ることができる

説明:主語「刀」=前置詞「以て」の対象すなわち目的語。主語「刀」は、性質として「可以斬人」=「(それで)人を斬ることができる」わけです。「それで」を括弧づけにしているのは、まぁ日本語ではわざわざ言わないかなぁと思ってのことです。

 

練習問題5:次の助動詞を含んだ漢文を訓読・翻訳してみよう。

(1)暴君不可諭。 諭…諭す。
(2)夷狄之地於今可侵。 侵…侵す。侵略する。
(3)論語可以教人仁。
(4)狂人不可与同戦場。 与…与[とも]に、と読む。同…同じうす。同じくする。

 

練習問題6:次の漢文訓読体を、助動詞を含んだ漢文に復文してみよう。

(1)此の魚は食らふべし。
(2)毒草食らふべからず。
(3)兵は以て人を討つべし。 兵…兵器。
(4)財宝以て人に幸を齎[もたら]すべからず。

 

参考:練習問題5の(4)について。
「与」は前置詞ですが、「不可与同戦場」のように、前置詞の目的語が省略されている場合には「与[とも]に」と読むのが習慣です。まぁ実際、「と戦場を同じうす」だと意味不明ですしね。意味の通る訓読にするという先人の知恵です。

 

 なお、漢文の「省略」については第16課当たりで勉強します…多分。

補足B:「足」の特殊文型

補足B:「足」も「可」の特殊文型と同じ文型を持つことがあります。

 

例1:明君尊。(「主語--他動詞」。主語=他動詞の目的語、の関係)

訓読:明君尊ぶに足る

訳:明君は尊ぶに値する

説明:主語「明君」=他動詞「尊ぶ」の対象すなわち目的語。主語「明君」は、性質として「足尊」=「尊ぶに値する」わけです。

 

例2:暗君不敬。(「主語-(副詞)--他動詞」。主語=他動詞の目的語、の関係。)

訓読:暗君敬ふに足らず。

訳:暗君は敬うに値しない。

説明:主語「暗君」=他動詞「敬ふ」の対象すなわち目的語。主語「暗君」は、性質として「不足敬」=「敬うに値しない」わけです。

 

例3:我矛未以貫汝盾。(「主語-(副詞)--前置詞-述語」。主語=前置詞の目的語、の関係。)

訓読:我が矛未だ以て汝の盾を貫くに足らず。

訳:私の矛はまだ(それでもって)お前の盾を貫くのに十分ではない。

説明:主語「我が矛」=前置詞「以て」の対象すなわち目的語。主語「我矛」は、性質として「足以貫汝盾」=「(それでもって)お前の盾を貫くのに十分ではない」わけです。

 

練習問題7:次の助動詞を含んだ漢文を訓読・翻訳してみよう。

(1)彼足与語。
(2)暗君不足仕。 仕…仕える。
(3)我矛未足以貫此盾。
(4)暗愚子女猶亦足愛。 猶[なほ]…なお。依然として。

 

練習問題8:次の漢文訓読体を、助動詞を含んだ漢文に復文してみよう。

(1)流言信ずるに足らず。 流言…噂のこと。
(2)臣の忠言聞くに足る。
(3)石斧は以て獣を狩るに足らず。
(4)石矢すら尚以て鹿を射るに足る。 すら尚…「尚」一字で表す。主後副詞。

参考:助動詞が名詞述語文を目的語に取る場合

[参考]漢文の助動詞が名詞述語を目的語に取ることができるのは先に示した「汝応倭人」などの通りですが、この手の文は読み手側としては結構難解だったりします(漢文では、動詞の意味も名詞の意味も両方持つ字が多いから)。
なので、作文の際には、「主語-助動詞-名詞」→「主語-助動詞-為-名詞」へと書き換えることをお勧めします。「為[たり]」は「為〜」で「〜である」という意味を表す他動詞です。

 

例1:汝応倭人。→汝応倭人[汝応に倭人たるべし]

訳:お前は倭人であるはずだ。

 

例2:汝不当王。→汝不当[汝当に王たるべからず]

訳:お前は王であるはずがない。

 

練習問題9:次の漢文を例1・例2に倣って書き換えよう。

(1)我欲此国之王。
(2)汝当盗賊。
(3)暗愚之輩不能師。 暗愚…道理に暗い。馬鹿である。 輩…輩[ともがら]。類。
(4)王須賢者。

おわりに

 以上にて今回の勉強はおしまいです。

 

 それではみなさん、ごきげんよう。

 

 

 

 

 

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