前回の練習の答え合わせ
解答
解答は以下の通りです。
練習問題1:次の漢文を日本語に翻訳してみよう。
(1)汝嫌我猶犬悪猿。
→解答:お前が私を嫌うのは、ちょうど犬が猿を嫌悪するのと同じだ。
(2)我聞汝之祖国已亡不在。
→解答:私は聞いている、お前の祖国がすでに亡んで存在しないと(いうことを)。
(3)神実在、伴而示我!
→解答:神が実在するならば、伴って私に示せ!
(4)汝之嫌我猶犬悪猿
→解答:お前が私を嫌うのは、ちょうど犬が猿を嫌悪するのと同じだ。
(5)我聞汝之祖国之已亡不在。
→解答:私は聞いている、お前の祖国がすでに亡んで存在しないと(いうことを)。
(6)神之実在、伴而示我!
→解答:神が実在するならば、伴って私に示せ!
(7)其嫌我猶犬悪猿
→解答:それが私を嫌うのは、ちょうど犬が猿を嫌悪するのと同じだ。
(8)我聞其已亡不在。
→解答:私は聞いている、それがすでに亡んで存在しないと(いうことを)。
(9)其実在、伴而示我!
→解答:それが実在するならば、伴って私に示せ!
語釈:①猶~:[動詞]ちょうど~のようなものだ。ちょうど~と同じだ。②悪~:~を嫌悪する ③已:すでに。もう。 ④伴~:~を伴う。連れる。 ⑤而:そして。
ちょこっと解説:
軽く補足します。(3)(6)(9)では、「伴而示我!」を命令文として訳していますが、「漢文ではどうやって命令文を作るの?」と疑問に思った方もいるかもしれません(私も高校生の頃疑問を抱きました)。
結論を言うと、日本語のように「書-け」「見-ろ」といった語尾変化を持たない漢文においては、命令文はその形の上では、普通の文となんら違いがありません。命令文なのか普通の文なのかは、完全に文脈に依存するのです。
因みにこの特徴は現代中国語にも受け継がれていますので、興味のある人は現代中国語も勉強してみましょう。
練習問題2:次の日本語を漢文に翻訳してみよう。但し、(4)~(6)には「之」を用い、(7)~(9)には「其」を用いること。
(1)私が神を信じないのは、ちょうど君が霊を信じないのと同じことさ。
→解答:我不信神猶汝不信霊。
(2)私はあなたの幸が多いことを願います。
→解答:我願君多幸。
(3)私が日本に渡ったとき、日本はまだ豊かではなかった。
→解答:我渡日本、日本未豊。
(4)私が神を信じないのは、ちょうど君が霊を信じないのと同じことさ。
→解答:我之不信神猶汝之不信霊。
(5)私はあなたの幸が多いことを願います。
→解答:我願君之多幸。
(6)私が日本に渡ったとき、日本はまだ豊かではなかった。
→解答:我之渡日本、日本未豊。
(7)それが神を信じないのは、ちょうど君が霊を信じないのと同じことさ。
→解答:其不信神猶汝不信霊。
(8)私はそれの幸が多いことを願います。
→解答:我願其多幸。
(9)それが日本に渡ったとき、日本はまだ豊かではなかった。
→解答:其渡日本、日本未豊。
語釈:①ちょうど~と同じことだ:猶~[猶は動詞]。 ②~は幸が多い:~多幸。
今日のむすびの言葉
いかがでしたか?今までの練習に比べると、少し難しいところがあったかもしれませんね。
ところで、「之」や「其」を用いた文の句化ですが、実は「之」や「其」を使う文の句化では「連用修飾句」となることはほとんどありません(私の経験則)。
「其」の連用修飾用法については前回述べたように私の類推による創作ですし、「之」の句化についても、私の二・三年に渡る大学の漢文読解演習において三・四回ぐらいしか御目にかかれませんでした。
前の文が後ろの文を修飾する「連用修飾」の用法は、実際には「之」も「其」も使わない、普通の文であることがほとんどです。
この実情を踏まえ、当ブログの漢作文では文の連用修飾用法については今後「其」も「之」も採用しないことにします(散々練習させておいて申し訳ない…)。
これに関連して、次の回においては、前の文が後ろの文をなんらかの形で修飾している用法、所謂[いわゆる]「複文」を学びます。複文は第十二回でも学びましたが、やはり実際の漢文でもよく使われますからね。もう少し練習を重ねておきたいと思います。
今日の漢文翻訳練習はここまでです。
それでは、また。
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