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第十六回漢文翻訳練習の練習問題の解答

翻訳問題解答

 こんにちは。造言主です。

 

 今日は前回第十六回目の漢文翻訳練習「場所を表す前置詞『於』」の翻訳問題の答え合わせです。

 解答は以下の通り。

 

練習問題1:次の漢文を日本語に翻訳してみよう。

(1)彼天才於此国。
翻訳解答:彼はこの国では天才である。

 

(2)我嘗逢丈夫於日本。
翻訳解答:私は嘗て丈夫に日本で出会ったことがある。

 

(3)彼於此国天才。
翻訳解答:彼はこの国では天才である。

 

(4)我嘗於日本逢丈夫。
翻訳解答:私は嘗て日本で丈夫に出会ったことがある。

 

(5)於此国彼天才。
翻訳解答:この国では彼は天才である。

 

(6)於日本我嘗逢丈夫。
翻訳解答:日本において、私は嘗て丈夫に出会ったことがある。

語釈:丈夫…立派な男。

 

ちょこっと解答解説:

学習の便宜上、「私は嘗て丈夫に日本で出会ったことがある」などとしていますが、自然な翻訳を心がけるなら、「日本で丈夫に」とするべきです。「於+場所」を用言の前におくか後ろにおくかによって、文意が変わるわけではありません。

 

文頭に置かれる場合は、強調的な意味合いがあるかもしれませんが…。

 

練習問題2:次に日本語を漢文に翻訳してみよう。

(1)家では私は寡黙である。
翻訳解答:於家我寡黙。

 

(2)彼は嘗て熊を山で見たことがある。
翻訳解答:彼嘗見熊於山。

 

(3)王は昔民衆の前で暴虐を為した。
翻訳解答:王昔於民衆之前為暴虐。

 

(4)朝鮮では、漢字はもう使わなくなってしまった。
翻訳解答:於朝鮮、漢字已不使矣。

 

(5)男は魚を河で獲り、これをその妻に与えた。
翻訳解答:男獲魚於河、与之其妻。

 

(6)私は嘗て日本で貧民が食を乞うのを見た。
翻訳解答:我嘗於日本見貧民乞食。

語釈:①嘗て~たことがある…嘗~。「嘗」は副詞。 ②民衆の前…「民衆之前」で可。 ③もう~なくなった…已~矣。

 

ちょこっと解説

(3)の「朝鮮に於いて、漢字已に使はれず。」についてですが、漢文では「使」の字は、普通「人を」使うという文脈での「使用」を意味します。人以外は、実際の漢文では「用」の字を使用します。

 

 これを踏まれば、(4)は「於朝鮮、漢字已不矣。」とすべきだったかもしれませんね。当ブログでは、単語レベルではさほど古典漢文に固執していませんから、「使」でも「用」でも私としてはどうでもいいのですが…。

参考:「於」の省略

 場所を表す「於+場所」という前置詞句は、実際の漢文では、厄介なことに「於」の字が省略されることがあります。

 

 練習問題2の解答をもとに一応ご紹介。実際には「於」の省略にももう少しちゃんとしたルールがあるかもしれませんが、とりあえず機械的に作文しておきます。

 

 実際の漢文では、こんな感じの文もあるんだということだけ、とりあえず覚えておいてください。

 

(1)我寡黙。→我寡黙。
(2)彼嘗見熊。→彼嘗見熊
(3)王昔民衆之前為暴虐。→王嘗民衆之前為暴虐。
(4)朝鮮、漢字已不使矣。→朝鮮、漢字已不使矣。
(5)男獲魚、与之其妻。→男獲魚、与之其妻。
(6)我嘗日本見貧民乞食。→我嘗日本見貧民乞食。

 

 なお、当ブログでは原則この「於」の省略は採用していません

 

 何故か?これを文法として認めてしまうと、漢文が一気に難解なものへと変貌してしまうからです。

 

 例えば「見熊於山」というフレーズ。「於」がなければ「熊山」という山を見た、とも解釈できます。

 

 つまり、「於」の字がなくなると、途端に漢文の意味の切れ目があいまいになって、文意が頗る通じにくくなってしまうのです。

 

 典型的な読者泣かせの漢文法ですね。漢文を原文で読まされた経験のある人であれば、「於」の省略はトラウマものですよ…。

 

 因みに私が学生時代のころ、「どうして『於』の字が省略されるのか」と先輩やら先生やらに聞いたことがあります。

 

 その時の回答は、「漢文は文のリズムを重視するからね。そのせいじゃない?」とのこと。まぁ実際、「於」の省略なんかは詩なんかで顕著ですからね。「文のリズム」。うわぁ、なんだろう、この理由。

 

 まぁ本当の理由は古代の中国人にしか分からないでしょうから、推測の答えに対して古代人に不平を言っても仕方ないんですけどね…。

 ふぅ、長くなってしまいました。

 

 今日の勉強はここまでです。皆さんお疲れさまでした~。

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