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第二十四回漢文翻訳練習「状況可能の『可』・実現可能の『得』」

第二十四回漢文翻訳練習「状況可能の『可』・実現可能の『得』

 お久しぶりです。造言主です。

 

 今回は、漢文翻訳練習第二十四回。前回学んだ可能の「可」について少し補足しておきます。ついでに「得」という助動詞っぽいもう一つの可能表現についても勉強します。

主体性を持った存在を主語とする可能の「可」

 可能の「可」は、ほぼ現代中国語の「可以」に相当する言葉です。「可」のおおまかな使い方については前回学びましたが、現代中国語の「可以」は、人など主体性を持ったものをも主語とすることができます。

 

 同様に、古典語の可能の「可」も、可能の「能」のように、主体性を持った存在を主語とすることができるのです。

 

 ただ、たとえ同じく人を主語とする場合でも、可能の「可」と可能の「能」とは、使い方は微妙に違います。「可」は状況可能、「能」は能力可能を表す言葉です。

 

 状況可能とは、「時間があって」「金銭的な余裕があって」など、なんらかの状況にあるから「〜できる」ことを表します。対して能力可能とは、単純に「能力がある」から「〜できる」ことを表します。

 

 この違いは、「可」が人や動物など主体性を持つ存在を主語とする場合には意識する必要がありますので、覚えておいてください。

状況可能の「可」の例

それでは早速、状況可能の「可」を使った例文を見ていきましょう。例文はいつものように、あくまで私の自作です。

 

例:

汝今日来我家乎?
訳:お前は今日私の家に来ることができるか?
解説:「来れる来れない」は能力の問題ではありませんよね?時間的な都合の問題です。こういう、状況的に「〜できる」「〜できない」は、「能」ではなく「可」を使います。

 

我今無銭、不之買。
訳:私は今お金を持っていないから、これを買うことができない。
解説:「買う買えない」は能力の問題ではありませんね。お金を持っているか持っていないかの問題です。状況的に「できる」「できない」の問題ですから、「能」ではなく「可」を使います。

 

 いかがでしたか。大体状況可能のなんたるかを理解できましたでしょうか。前回は人・動物等→「能」を使う、事物→「可」を使うと、頗る単純な分け方をしてしまいましたが、「可」については人や動物をも主語にできるので、そこは注意して下さいね。

補足:実現可能の「得」

 漢文の可能表現には、能力可能の「能」と、状況可能の「可」の他、実現可能の「得」があります。

 

 「得」は、漢文法を扱う多くの書籍には「機会があってできる」ことを表す可能表現として記載されています。

 

 でも私が実際に漢文を読んで来た経験に基づけば、機会・状況・能力云々というより、単にその動作が実現できるか/できたかどうかという一点だけを表現した言葉っぽいです。

 

例:

我往日本、幸見彼。
訳:私は日本に行ったが、幸い彼に会うことができた
解説:単に「見[まみ]ゆるを得[え]たり」=「会うことができた」「会うことを実現できた」と述べたもの。

 

昨日不往海、今日往。
訳:昨日は海に行くことができなかったが、今日は往くことができた
解説:単に海に行くことができたかできなかったかを述べたもの。この文は、「得」を「可」に代えると、「なんらかの事情があって昨日は行くことが許されなかったが、今日なら問題なく行くことができる」という感じの意味になる。

 

 いかがでしたか。少し感覚が分かりましたか?

 

 ところで実現可能の「得」は、「能」と同じく「人」など主体性をもった存在が主語になることが多い気がします。

 

 まぁ作文する時は、物事・事象を主語にする可能表現は「可」のみで、人や獣は「能」「可」「得」の三つの可能表現が可能と覚えておけば多分問題ないでしょう。

 

 人や獣を主語とする場合は、可能表現の使い分けに注意しながら作文にとりくみましょうね。

練習問題

練習問題1:次の漢文を日本語に翻訳してみよう。

(1)我昨日逢暴雨、不可帰家。
(2)彼今在日本、不之可見。
(3)汝在北海道、可見降雪。我羨之。
(4)有銭可貸、無銭不可貸。我今無銭、不之可貸。
(5)汝昨晩得安眠乎?―得。
(6)昨日終日探彼、終不得見。

 

練習問題2:次の日本語を漢文に翻訳してみよう。

(1)お前は今年の冬は家に帰れるか?―今年の冬は私はとても忙しい。家に帰れない。
(2)今彼に会うことができるか?―彼は今家にいない。会えない。
(3)日本に渡り、ようやく最新の技術を学ぶことができた。
(4)私は最後まで彼を信じることができなかった。

語釈:@とても…頗 A〜か?…〜乎? Bようやく…「初」「方」。いずれも「はじ-めて」と訓読する。 C最後まで…「終[つひ-に]」。

 今日の漢文の勉強はここまで。それではみなさん、ごきげんよう。

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