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第二十六回漢文翻訳練習「名詞の修飾」

第二十六回漢文翻訳練習:「漢文における名詞修飾」

 おはようございます。造言主です。

 

 今回は、漢文翻訳練習第二十六回。漢文における名詞修飾の方法について勉強していきます。

名詞修飾って?

 名詞修飾というのは、「新しい服」とか「私のおもちゃ」とか「私が買った本」とか「人を呪う奴」とかがその具合例になりますね。

 

@新しい服→「新しい+服」で、「新しい」が名詞「服」を修飾しています。

 

A私のおもちゃ→「私の+おもちゃ」で、「私の」が名詞「おもちゃ」を修飾。

 

B私が買った本→「私が買った本」で、「私が買った」が名詞「本」を修飾。

 

C人を呪う奴→「人を呪う+奴」で、「人を呪う」が名詞「奴」を修飾。

 

 名詞修飾とはこんな感じで、その名詞が具体的にどんなものなのかを付け加える用法のことです。

 

 この名詞修飾という現象は、言語という言語すべてに存在する現象で、当然ながら漢文にも存在します。

漢文の名詞修飾の形式

 漢文の名詞修飾の形式は、大体以下の四つです。

 

@名詞+(之)+名詞…名詞の名詞の意味を表します。
例:

此国貴族 訳:この国の貴族
今日之事 訳:今日のこと

 

注意:

漢文は無駄に句のリズムを大切にするらしく、名詞句としては、二字或いは四字が好まれる傾向にあります。なので@の名詞修飾を作文するときは、それでちょうど二字或いは四字になるように、「之」を任意でつけたりつけなかったりすればいいと思います。ただ、名詞句が五字以上となる場合[滅多に出くわすことはない]は、分かりやすくするためにも「之」はつけた方がいいと思います。

 

A形容詞・自動詞+(之)+名詞…形容詞である名詞・自動詞する名詞、の意味を表します。
例:

王 訳:愚かな
人 訳:行く
暗愚之王 訳:暗愚なる
進行之人 訳:進行する

 

注意;

Aの名詞修飾の場合、形容詞/自動詞が一文字ならば、「之」はつけない方が自然です。それ以外の場合は、二字・四字になるように心がけて、「之」の有無を決定するのがよいでしょう。五字以上は滅多にありませんが、そうなる場合はやはり「之」をつけた方が分かり易いものと思います。

 

B他動詞+目的語+…+(之)+名詞…「目的語を他動詞する名詞」の意。名詞は他動詞の動作主となる。
例:

狩獣之人 訳:獣を狩る
譲位於愚子之王 訳:位を愚かな子に譲った
未娶妻男 訳:まだ妻を娶[めと]らない

 

注意:

@A同様、なるべく二字/四字の名詞句となるようにします五字以上の場合は「之」をつけた方がいいです。というかこの形式の場合、「之」をつけないと解釈に支障を来す可能性が高いので、是非とも五字以上は「之」をつけるべきです。

 

C甲+(之)+所+他動詞+(之)+乙…甲[名詞]が他動詞する乙[名詞]。甲は他動詞の動作主。乙は他動詞の目的語という関係。
例:

我所愛妻 訳:私が愛する
解説:「愛する」の動作主は「我」、目的語は「妻」。

 

我之所憎之故郷 訳:私が憎む故郷
解説:「憎む」動作主は「我」。動作の対象は「故郷」。

 

汝所望之未来 訳:君が望んだ未来
解説:「望んだ」のは「汝」。何を望んだかというと「未来」である。

 

人之所祈祷神 訳:人が祈祷する
解説:「祈祷する」のは「人」。「祈祷」の目的語は「神」。

 

注意:

@AB同様、極力は四字にするのが望ましいですが、五字以上の場合はにんともかんとも。強いて言えば、読み手としては「甲+他動詞+所+之+乙」というように、乙の前に「之」をつけた方が分かり易いです。「甲」の直後の「之」はなくても読解の上でまったく支障とはなりません。

補足@:形式名詞「者」

 漢文でよく使われる重要語に「者」があります。

 

 形式名詞としての「者」は、以下のような形式と意味を持ちます。

 

形式:用言+(目的語)+…+者
意味:(目的語を)用言する/用言である者(=人/物/事など)

 

例:

愛人者 訳:人を愛する
教汝兵法者 訳:お前に兵法を教えた

 

補足:この用法では、「用言+…+者」の直前に、「名詞(+之)」が来ることもあります。この場合、「名詞の中で〜するもの/であるもの」くらいの意味になります。

 

例:

狼之好食人者 訳:狼(の中)で人を好んで食べる
日本人不愛平和者 訳:日本人(の中)で平和を愛さない

 

また、指示代名詞「其」がついて、「その〜する者/である者」ということもあることから、当ブログでは、指示代名詞「彼」「此」「其」を「〜者」前につけてもよいことにします。
例:

愛人者 訳:その、人を愛する
好戦者 訳:この、戦いを好む
暗愚者 訳:かの、暗愚である者

補足A:「所」の名詞修飾じゃない使い方

 形式名詞「所」は、以下のような形式と意味も持ちます。

 

形式:「甲(之)所+他動詞+(者)」
意味:「甲が他動詞するところ(=もの/こと/人)」
例:

我之所欲 訳:私が欲しいもの/人/こと
人所嘲笑 訳:人が嘲笑するもの/人/こと
王所思者 訳:王が考えているもの/人/こと

 

 所自体の訳は「もの/人/こと」などとなります。要は所は他動詞の対象を表す言葉です。

 

 甲は他動詞の動作主であり、所[もの/人/こと]は他動詞の目的語という関係になります。

練習問題

練習問題1:次の漢文を日本語に翻訳してみよう。

(1)古人重文、今人軽之。
(2)日本之王今無権力。国権首相所有也。
(3)人皆悪侵略之国、暴虐之君。
(4)教其民悪他国之国、将来必有戦争。
(5)言汝所望者。
(6)我問其所嘗在之国。
(7)王之善治国者謂之賢王、乱其国者謂之愚王。

語釈:@重…重んじる。重視する。 A軽…軽んじる。軽視する。 B有…持つ。有する。所有する。 C悪…嫌悪する。嫌う。 D善…よく。うまく。

 

練習問題2:次の日本語を漢文に翻訳してみよう。

(1)馬で速く走ることができる者は駿馬と曰[い]い、常に遅く馳せる者は駑馬と曰う。
(2)此の目前に倒れている者は、私の兄である。
(3)福は笑う者に至り、禍いは泣く者に及ぶ。
(4)速く走る馬はこれを駿馬と謂い、遅く馳せる馬はこれを駑馬と謂う。
(5)私は幼きより欲するものが無い。
(6)民を軽んずる王は長持ちしない。
(7)古の王は国を私有物化していたが、現代国家は国民の持つものである。

語釈:甲は、乙と曰う…甲曰乙 甲は之を乙と謂う…甲謂之乙 長持ちする…久[ひさ‐し] C〜を私有物化する…私〜。「私」は、「わたくし‐す」という動詞。 D〜を持つ。有する。所有する。…有〜。

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