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第二課:学而第一「有子曰」②

第二課:学而第一「有子曰」②

 みなさん、こんにちは。造言です。

 

 前回に引き続き、「有子曰」の解説をしていきますよ。

解説の前に

 解説の前に、今日やるところを確認しましょうか。

 

 今日やるのは、以下の文章のうち、黄色で塗られた部分です。

 

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有子曰(孔子弟子有若)其為人也孝弟而好犯上者鮮矣(鮮少也上謂凡在已上者言孝弟之人必恭順好欲犯其上者少也)「已己也漢文屡己作已須依其文脈正其字義孝恕親之態弟順兄之態恭与順好与欲各略同其義則二者所謂連也」不好犯上而好作亂者未之有也君子務本本立而道生(本基也基立而後可大成)孝弟也者其為仁之本與(先能事父兄然後仁道可大成)

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 まぁ要するに、前回のやり残し(疏を除く)ですね。

 

 本課の解説を読む前に一度自力で上の黄色の部分を書き下し、翻訳してみることをお薦めします。

 

三文目①

 みなさま、すでに自力で読み進められましたでしょうか?

 

ではさっそく、解説に入りたいと思います。

 

 まずは三文目の確認をします。以下の黄色い部分でしたね。

 

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有子曰(孔子弟子有若)其為人也孝弟而好犯上者鮮矣(鮮少也上謂凡在已上者言孝弟之人必恭順好欲犯其上者少也)「已己也漢文屡己作已須依其文脈正其字義孝恕親之態弟順兄之態恭与順好与欲各略同其義則二者所謂連也」不好犯上而好作亂者未之有也君子務本本立而道生(本基也基立而後可大成)孝弟也者其為仁之本與(先能事父兄然後仁道可大成)

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 これと言って決まり文句も特殊な文法もないのでさらっと解説します。

 

 

 

それでは解説開始

 

 

 

まずは本文「不好犯上而好作亂者未之有也君子務本本立而道生」。

 

これは、「上を犯すを好まずして亂を作[]すを好む者は、未だ之有らざるなり。君子は本に務む。本立ちて道生ず。」という感じですね。「作す」は「作る」などと読んでもいいかもしれません。本は「もと」と訓読みでもOKです。

 

ともあれ意味は「上を犯すことを好まないのに乱をなすのを好む者は、未だいない。君子は本に務める。本が立って道が生じる。」となります。

 

…うーん、直訳しても意味わかんねぇ。まぁこういう曖昧で意味が分かるんだかわかんないんだかわからんタイプの文は、後で「疏」の部分を読むことで解決することも多いのでひとまず訳はこれでいきます。「疏」を読んで理解したあとでまた訳に反映させればよいだけの話ですので心配ご無用です。

 

三文目②

 次に注。以下の黄色い部分ですね。

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有子曰(孔子弟子有若)其為人也孝弟而好犯上者鮮矣(鮮少也上謂凡在已上者言孝弟之人必恭順好欲犯其上者少也)「已己也漢文屡己作已須依其文脈正其字義孝恕親之態弟順兄之態恭与順好与欲各略同其義則二者所謂連也」不好犯上而好作亂者未之有也君子務本本立而道生(本基也基立而後可大成)孝弟也者其為仁之本與(先能事父兄然後仁道可大成)

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 では解説を。

 

 

 

「甲乙也。」は「甲()は乙なり。」でしたね。「本は基なり。基立ちて而る後に大成すべし。」、意味は「本は基本である。基本が立ってそうしてはじめて大成することができる。」となります。漢文の「而後」「然後」は結構強調の意味が強く、「そうしてはじめて」と訳すとぴったり来ることが多々ありますので、ついでに覚えておいてください。

 

本文最後

 次、本文最後の文ですね。

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有子曰(孔子弟子有若)其為人也孝弟而好犯上者鮮矣(鮮少也上謂凡在已上者言孝弟之人必恭順好欲犯其上者少也)「已己也漢文屡己作已須依其文脈正其字義孝恕親之態弟順兄之態恭与順好与欲各略同其義則二者所謂連也」不好犯上而好作亂者未之有也君子務本本立而道生(本基也基立而後可大成)孝弟也者其為仁之本與(先能事父兄然後仁道可大成)

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 これは正直『論語』など古い書物に見られる文型なので、文法だけ抑えていても難しいかもしれません。手元に辞書などあれば調べてみましょう。

 

 まず前提として「也者」。これは「~也者」で、「~者」と同じ意味で主題を表します。従って「~なる者は」「~とは」という訓読になりますね。

 

で、その後ろの「其~與。」ですが、これまた定型句。「其れ~か。」などと読み、「~か。」「~だろうか。」という感じに訳されます。まぁこの辺も実は疏を見れば大体わかります。昔は礼を尊び、婉曲的な表現が好まれたので、「與[]」と言って濁している。そんな感じの話が後で読む疏に出てきますよ。

 

 さて、以上を踏まえて黄色い部分を読んでみてください。

 

 

 

 

 解答です。

 

 

 

 「孝弟なる者は、其れ仁の本たるか。」と読み、意味は、「孝弟というものは、仁の基本なのか。」となります。孝は親を思いやる態度、弟は兄、より広く言えば年長者に従順である態度でしたね。

 

注最後

 最後に注を読みましょう。

 

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有子曰(孔子弟子有若)其為人也孝弟而好犯上者鮮矣(鮮少也上謂凡在已上者言孝弟之人必恭順好欲犯其上者少也)「已己也漢文屡己作已須依其文脈正其字義孝恕親之態弟順兄之態恭与順好与欲各略同其義則二者所謂連也」不好犯上而好作亂者未之有也君子務本本立而道生(本基也基立而後可大成)孝弟也者其為仁之本與(先能事父兄然後仁道可大成)

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 これは特に特殊な文法はないです。さらっと解説しますね。

 

 

 では解説です。

 

 

 

「先づ能く父兄に事[つか]へ、然る後に仁道は大成すべし。」と読み、「先ずは父兄に仕えることができて、そうしてはじめて仁の道は大成することができる。」と解きます。まぁまんまですね。

 

父は「孝」の対象で、兄は「弟」の対象。どちらも性別が男なのは古代の男性優勢な社会を思い描けば特に疑問にも感じないと思います。「然後」はちょっと前に「而後」で解説したように、漢文では「そうしてはじめて」くらいの強めの訳の方が漢文としての「しかるのちに」の語感をよく表せます。

 

おわりに

 以上で本文と注の解説はおしまい。残るは疏の解説ですね。

 

 疏は文が本文以上に長いので、解説も長くなりそうですな。ともあれ今回はここまででお開きにしたいと思います。

 

 それではみなさん、ごきげんよう。再見。

 


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