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文法第三:前置詞句

超速理解漢文法:文法第三 前置詞句

 みなさん、こんにちは。造言です。

 

 今回は、前置詞+名詞で構成される句、「前置詞句」の位置について勉強します。

概要説明

 漢文には前置詞というのがあります。「於[オ-イテ]」「以[モツ-テ]」「自[ヨ-リ]」「至[イタ-ルマデ]」などがこれですね。

 

 前置詞は名詞の前に置いて、「前置詞句」という句を作ります。つまり、「前置詞句」=「前置詞+名詞」という構成です。

 

前置詞句の例:

+倭国→於倭国 訓:倭国に於いて

+刀剣→以刀剣 訓:刀剣を以て

+古→自古 訓:古より

+今→至今 訓:今に至るまで

 

 

 また、ごく一部の慣用表現では「前置詞+名詞+前置詞+名詞」や「前置詞+名詞+以来」「前置詞+名詞+以+名詞」などでも、前置詞句を造ることができます。慣用表現の前置詞句は、まぁ暗記が一番ですね。

 

慣用表現の前置詞句の例:

+古++今→自古至今 訓:古よりに至るまで

+古+以来→自古以来 訓:古より以来[このかた]

+今++後→自今以後 訓:今より以後

+此++下→自此以下 訓:此より以下

 

 

 この前置詞句というものは、基本文型に挿入することができます。前置詞句を挿入できる場所は全部で以下の三か所となります。

@文頭

A述語の前

B文尾

 

 

 いま、これを基本文型に挿入した形に直して表すと、以下のようになります。

@前置詞句-主語-述語。

A主語-前置詞句-述語。

B主語-述語-前置詞句

 

 

(なお、前置詞句がある状態でも、前回学んだ副詞は挿入することができます。つまり、副詞と前置詞句は一文の中に併用可能です。)

 

 以下、文頭に置かれる前置詞句を「文頭前置詞句」、述語の前に置かれる前置詞句を「述前前置詞句」、文尾の前に置かれる前置詞句を「文尾前置詞句」と命名し、それぞれの詳細について説明していくこととします。

文頭前置詞句

文型:前置詞句-主語-述語

例文:及夜皆已就寝。(前置詞句-主語-副詞-副詞-述語。」の構造)

訓読:夜に及び皆已に就寝す。

訳:夜になり、人は皆もう就寝した。

 

(以上、黒太字は前置詞句部分を指し、下線部は副詞等説明には必要のない微要素を指す。)

 

 ご覧の通り、文頭におかれる前置詞句のことです。文頭前置詞句は、「前置詞+時間名詞」で構成されるものに多いのが特徴です。
また、「及[〜に及び]」「至[〜に至るまで]」「拠[〜に拠りて]」などの前置詞が造る前置詞句も、たいていはこの文頭前置詞句となります。
そのほか、「自-名詞-至-名詞[名詞より名詞に至るまで]」「自-名詞-以来[名詞より以来]」「自-名詞-以上[名詞より以上]」「自-名詞-以下[名詞より以下]」などの慣用表現もみな文頭前置詞句を作ります。この辺は暗記してしまうのがよいでしょう。

 

練習問題1:次の文頭前置詞句を含んだ漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)至今民不許其王。
(2)拠之其説恐誤也。 恐…[副詞]恐らくは。
(3)自貧至貴人皆憎之。 貧…貧しき。貧しい人。 貴…貴き。高貴な人。
(4)自此以後人自起火。 起…起こす。生じさせる。

 

練習問題2:次の漢文訓読体を、文頭前置詞句を含んだ漢文に復文してみよう。

(1)此より以東夷狄 国を治む。 夷狄[イテキ]…蛮族。未開人。
(2)後世に至るまで倭人皆之を信ず。
(3)夏より以来中華 其の繁栄を絶たず。
(4)秋に及び群虫大いに田を害す。

述前前置詞句

文型:主語-前置詞句-述語。

例文:倭之武人以刀討敵。(「主語-副詞-前置詞句-述語。」の構造)

訓読:倭の武人は刀を以て敵を討つ。

訳:倭の武人は昔は刀で敵を討伐していた。

 

 述前前置詞句は、述語の前に置かれる前置詞句です。「以[〜を以て]」「於[〜に於いて]」「自[より]」「為[〜の為[ため]に]」「因[〜に因[よ]りて]」「与[〜と]」などの前置詞が造る前置詞句はたいていこの述前前置詞句の型をとります。この辺の前置詞は丸暗記してしまいましょう。数も少ないですしね。

 

練習問題3:次の述前前置詞句を含んだ漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)王与民共歓。 共…共[とも]にす。 歓…歓[よろこ]び。
(2)母為其子教之学。 学…学問。
(3)我自今日改名。
(4)群臣因之恐王。

 

練習問題4:次の漢文訓読体を、述前前置詞句を含んだ漢文に復文してみよう。

(1)我 汝と倶に帰らん。 倶[とも]に…倶[副詞]。
(2)倭 夷を以て夷を征す。 夷…未開人。蛮族。 征す…征服する。
(3)暗君 政[まつりごと]に於いて暗し。 暗し…詳しくない。知識に乏しい。
(4)民 其の王の為に農事に従ふ。 農事…農作業。農業の仕事。

 

文尾前置詞句

文型:主語-述語-前置詞句。

例文:昔者武人闘以刀(副詞-主語-述語-前置詞句」の構成)

訓読:昔者武人闘ふに刀を以てす

訳:昔は武人は刀で闘った。

 

 文尾前置詞句は、基本文型の後ろに挿入される前置詞句のことです。この前置詞句は割と珍しい方で、前置詞「於[〜に][〜より]」「以[〜を以て]」が造る前置詞句以外ではあまり見られません。
 文尾前置詞句は、一応は「自」「為」などの前置詞も造ることができますが(その場合、「自[よ]りす」「為[ため]にす」などと訓読)、滅多にお目にかかれる代物でもないので、当サイトでは「於」「以」以外は取り扱わないこととします。悪しからず。

 

練習問題5:次の文尾前置詞句を含んだ漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)我教子仁以論語。
(2)暗君暗於政。 暗…暗し。〜に詳しくない。〜に疎い。
(3)憎生於愛。
(4)倭国之将討夷以夷。 将…将軍。 夷…東夷。東に住む蛮族。

 

練習問題6:次の漢文訓読体を、文尾前置詞句を含んだ漢文に復文してみよう。

(1)聖王 国を治むるに徳を以てす。
(2)賢君 国を統ぶるに法を以てす。
(3)争ひは蔑みより起く。 蔑み…侮蔑。軽蔑。見下すこと。
(4)狼は食に貪[たん]たり。 貪…貪欲である。

補足@:前置詞句は一文に複数挿入することができます。

例1:及夜就寝於野外(前置詞句-主語-副詞-述語-前置詞句」の構成)

訓読:夜に及び野外に就寝す。

訳:夜になり人は野外に就寝した。

 

例2:自少至長為我説仁徳以論語(前置詞句-主語-前置詞句-述語-前置詞句。」構成。)

訓読:[わか]きより長ずるに至るまで我が為に仁徳を説くに論語を以てす

訳:若い頃から成長するまで父は私のために論語で仁徳を説いた。

参考:「為」は「為+代名詞」の時、「代名詞が為に」と訓読します。
例…為我→我が為に 為之→之が為に 為汝→汝が為に などなど

補足A:述前前置詞句と副詞が一文に併存する時

 述前前置詞句と副詞が一文に併存する時は、副詞が「主後副詞」か「述前副詞」かによって語順が変わってきます。

 

a.副詞が述前副詞の時、
→語順は「主語-前置詞句-副詞-述語。」となります(例1・例2)。

例1:我以刀斬之。(「主語-前置詞句-副詞-述語」の構成。)

訓読:我刀を以て速やかに之を斬る。

訳:私は刀で速やかにこれを斬った。

 

例2:王為民課兵役。(「主語-前置詞句-副詞-述語」の構成。)

訓読:王 民の為に兵役を課さ

訳:王は民の為に兵役を課さなかった

 

 但し、否定副詞「不」「未」などは、前置詞句の前において、前置詞句+述語を打ち消すことが可能です。つまり、「主語-否定副詞-前置詞句-述語」という構成が可能なわけです(例3)。打消の副詞はあくまでも打ち消す言葉の前に置くのが原則というわけです。

 

例3:王為民治国。(「主語-副詞-前置詞句-述語」の構成。)

訓読:王 民の為には国を治め

訳:王は民のために国を治めたりはしない。王は民のために国を治めるわけではない

 

b.副詞が主後副詞の時、
→語順は「主語-副詞-前置詞句-述語。」となります(例4)。

例4:諸侯以不義討之。(「主語-副詞-前置詞句-述語」という構成。)

訓読:諸侯並びに不義を以て之を討つ。

訳:諸侯はならびに不義を理由に之を討伐した。

 

 

但し、慣用表現「与-名詞-倶」「与-名詞-共」はこの原則に反しますので慣用表現として覚えてしまってください(例5)。当サイトではこの二つは、これ自体一種の前置詞句として扱います。

例5:群臣為之与妻子倶帰郷。(「主語-副詞-前置詞句-前置詞句-述語」の構成。)

訓読:群臣之が為に妻子と倶に帰郷す。

訳:臣下たちはこのために妻子と一緒に帰郷した。

 

練習問題7:次の前置詞句を含んだ漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)自古至今王不為民善治国。 善…善[よ]く。
(2)国王自此以不忠妄誅賢臣。 妄…妄[みだ]りに。
(3)自古以来有徳之師導人以仁。 有徳之人…道徳のある人。
(4)自此以来村人常皆因之不笑。

 

練習問題8:次の漢文訓読体を、前置詞句を含んだ漢文に復文してみよう。

(1)幼きより老ゆるに至るまで民並びに国の為に鍬[くわ]を以て土を耕す。
(2)此より以後犬 傷の為に速やかに行かず。
(3)男 之が為に棒を以て大いに子を打つ。
(4)古来王族 民の為には国を治めず。

 

おわりに

 以上にて、今回の勉強はおしまいです。

 

 それではみなさん、ごきげんよう。

 

 

 

 

 

 

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