漢文-日本語翻訳練習サイト

文法第十:否定倒置

文法第十:否定倒置

 みなさん、こんにちは。

 

 今回は、否定倒置について学習します。

否定倒置とは?

 漢文では、否定語が文中にあるとき、その否定語の直後の「他動詞の目的語」となっている代名詞の位置が変化することがあります。これを「否定倒置」と命名します。

本題の前に―否定語とは?

 まずは、否定語とはなにか、というところから勉強を始めましょう。

 

 否定語というのは、「~ない」とか「誰も~ない」とか「~するな」とか、とにかく述語部分を否定する働きを持つ語彙のことです。

 

 漢文の否定語の代表的なものは、以下の六つです。まぁ、作文の際にはこの六つだけ覚えていれば問題ありません。

 

①不

副詞です。「主語--述語。」の形で用い、訓読の型は「主語 述語ず。」となります。

 

動詞述語を否定し、打消「主語は述語しない」の意味を表します。

 

例:我言。 空暗。 此静。

訓読:我言は。 空暗から。 此[ここ]静かなら

訳:私は言わない。 空は暗くない。 ここは静かではない

 

②未

副詞です。「主語--述語。」の形で用い、訓読の型は「主語未だ述語ず。」となります。

 

動詞述語を否定し、打消「主語はまだ述語しない/主語はまだ述語とはいえない。」の意味を表します。

 

なお、まだが意味する内容には、「時間的にまだなっていない」という場合と、「程度的にまだ達していない」という場合の二つがあります。どちらの意味となるかは、完全に文脈に依存します。

 

例:我言。 空暗。 此静。

訓読:我 未だ言は。 空未だ暗から。 此未だ静かなら

訳:私はまだ言わない。 空はまだ暗くない。 ここはまだ静かだとは言えない

※最後の「まだ…とは言えない」は、程度の意味で解釈した場合の意訳です。直訳はあくまで「まだ~ない。」です。

 

③勿

副詞です。「主語--述語。」の形で用い、訓読の型は「主語 述語(こと)勿れ。」となります。

 

動詞述語を否定し、禁止「主語は/主語よ、述語するな/述語してはいけない」の意味を表します。主語は省かれることも多々あります。

 

…まぁ、実は命令や禁止文における主語らしき文頭の語は、正確には主語ではなく呼びかけの言葉なんですけどね。まぁ作文などの際にはそんなこと気にする必要ないので、当サイトではこの命令文における呼びかけ言葉も主語として扱います。悪しからず。

 

例:言。 汝逆其王。

訓読:言ふ(こと)勿れ。 汝 其の王に逆らふ(こと)勿れ

訳:言ってはいけない。 お前は自分の王に逆らう

                                                                                                            

④莫

代名詞です。「主題--述語。」の形で用い、訓読の型は「主題に述語(もの/ところ)[]。」となります。

 

述語を否定し、「主題の誰も/なにも/どこも述語しない。/主題に述語する人/もの/ところは()ない。」の意味を表します。

 

なお、「莫」自体は、主語にしかなれません。また、主題は省かれることもあります。この構文においては。主題は人・物・場所・集団など、「莫」が属するなにかとなります。

 

例:言。 群臣逆其王。

訓読:言ふ(もの)莫し。 群臣に其の王に逆らふ(もの)莫し

訳:誰も言わない。 群臣にその王に逆らうものはいない

 

⑤非

副詞です。「主語--述語。」の形で用い、訓読の型は「述語に非ず。」。

 

名詞述語を否定し、「主語は述語ではない。」の意味を表します。

 

例:我人。 彼倭国之王。

訓読:我 人に非ず。 彼は倭国の王に非ず

訳:私は人ではない。 彼は倭国の王ではない

 

⑥無

動詞です。「主語--目的語。」の形で用い、訓読の型は「主語に目的語無し。」となります。

 

動詞「有」の否定語で、「主語に目的語は無い。」の意味を表します。

 

例:敵。 城内人。

訓読:敵無し。 城内に人無し

訳:敵は無い。 城市の中に人はいない

 

 このうち、否定倒置を起こすのは①~④です。以後、この四つが起こす否定倒置について勉強していきましょう。

 

練習問題1:次の否定語を含む漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)   此村莫笑。

(2)   汝勿盗物。

(3)   古来倭人莫不敬大王。

(4)   王勿信讒。 讒…讒言。人を悪く言う告げ口。

 

練習問題2:次の書き下し文を、否定語を含む漢文に復元してみよう。

(1)   群臣に其の王に逆らふもの莫し。

(2)   此の国に不義を見て悪まざるもの莫し。

(3)   汝 人を憎む勿れ。

(4)   嗚呼大王 民を虐ぐること勿れ。

 

参考:否定語色々

 ところで、当サイトでは「不」「未」「勿」「莫」「非」「無」を否定語の代表としましたが、実際の漢文では、実はもっと否定語のバリエーションが豊富だったりします。

 

 例えば、禁止の「勿」ですが、これと全く同じ使われ方をするものに「無」「莫」「毋」があります。「非」にも、これの他「匪」なんて字もあります。

 

 更に言えば、「不」の意味で「無」「莫」が使われたり、「非」の意味で「不」が使われたりということすらざらにあります。

 

 …とはいうもののですね、いくら漢文のバリエーションが豊富だからっていって、なんでもかんでも採用というわけにはいきません(作文と読解に支障来しかねないからね)

 

 当サイトでは、漢文を一言語として耐えうる形に直して使おうという目的もあるので、こういう無意味に豊富になって意志疎通という言語の本質にまで悪影響を及ぼした多様性に関しては、容赦なく駆逐しています。

 

 そのうち基本的な字だけを採用して代表字とするというやつですね。終助詞のところでもやりましたが、当サイトではそんなこともしていますので悪しからず。

 

本題:否定倒置のルール

 さて、否定語の説明はここまでにしてそろそろ本題に入りましょう。ずばり、否定倒置のルールです。

 

 否定倒置のルールは割と単純です。

 

漢文に「否定語-他動詞-目的語」という構造が見られる時、その「目的語」が「※代名詞」の場合は語順が変化して「否定語-目的語-他動詞」となる。

※代名詞とは、「我」「汝」「彼」「此」「之」などのことです。一般名詞の代わりに、「私」「君」「あれ」「これ」「それ」などと言って代用する言葉のことですね。

 

 以上が否定倒置のルールです。文型で表すと、以下のようになるということですね。

 

 具体例もついでに挙げておきますので、まぁ見比べて理解してくださればと思います。

 

a.否定語が副詞の時

本来の文型:主語-否定語-他動詞-目的語

倒置の文型:主語-否定語-目的語-他動詞

 

例1:

本来の語順:汝乎。

倒置した時:汝乎。

訓読:汝 之を知らざるか。

訳:お前はこれを知らないのか。

説明:本来の語順の構造は、「主語-否定語副詞-他動詞-代名詞目的語-終助詞。」ですね。ですが、この文は「」、すなわち「否定語副詞-他動詞-代名詞目的語」という構造を含みます。

 つまり、「否定語-他動詞-目的語」の構造を含み、且つ目的語が「之」という代名詞です。

 故に否定倒置を起こして、「」、すなたち「主語-否定語副詞-代名詞目的語-他動詞-終助詞。」という構造へと変化するわけです。

 

例2:

本来の語順:朝行而乎。

倒置した時:朝行而乎。

訓読:朝行きて未だ此に至らざるか。

訳:朝に行ってまだここに至らないのか。

説明:本来の語順の構造は、「文頭副詞-自動詞-接続詞-否定副詞-他動詞-目的語-終助詞。」ですね。ですが、この文は「」、すなわち「否定語副詞-他動詞-代名詞目的語」という構造を含みます。

 つまり、「否定語-他動詞-目的語」の構造を含み、且つ目的語が「此」という代名詞です。

 故に否定倒置を起こして、「」、すなたち「文頭副詞-自動詞-接続詞-否定副詞-目的語-他動詞-終助詞。」という構造へと変化するわけです。

 

例3:

本来の語順:汝矣。

倒置した時:汝矣。

訓読:汝 之を忘るる勿れ。

訳:お前はこれを忘れるな。

説明:本来の語順の構造は、「主語-否定語副詞-他動詞-代名詞目的語-終助詞。」ですね。ですが、この文は「」、すなわち「否定語副詞-他動詞-代名詞目的語」という構造を含みます。

 つまり、「否定語-他動詞-目的語」の構造を含み、且つ目的語が「之」という代名詞です。

 故に否定倒置を起こして、「」、すなたち「主語-否定語副詞-代名詞目的語-他動詞-終助詞。」という構造へと変化するわけです。

 

b.否定語が主語の時

本来の文型:否定語-他動詞-目的語

倒置の文型:否定語-目的語-他動詞

 

例:

本来の語順:嗚呼哉。

倒置した時:嗚呼哉。

訓読:嗚呼我を咎むるもの莫きかな。

訳:ああ、誰も私を咎めないなぁ。

説明:本来の語順の構造は、「感動詞-否定語主語-他動詞-代名詞目的語-終助詞。」ですね。ですが、この文は「」、すなわち「否定語主語-他動詞-代名詞目的語」という構造を含みます。

 つまり、「否定語-他動詞-目的語」の構造を含み、且つ目的語が「我」という代名詞です。

 故に否定倒置を起こして、「」、すなたち「感動詞-否定語主語-代名詞目的語-他動詞-終助詞。」という構造へと変化するわけです。

 

 以上で、否定倒置の基本の説明はおしまいです。そんなに難しくもなかったのではないでしょうか。

 

 ともあれ、練習を通して知識を確実なものにしていただければと思います。

 

練習問題3:次の否定倒置した漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1) 汝未我信乎。

(2) 今日倭人皆不之知也。

(3) 王勿彼用。

(4) 今日倭国莫之知也。

 

練習問題4:次の書き下し文を、否定倒置を起こした漢文に復元してみよう。

(1) 中華の民に之を哀れむ莫し。

(2) 民 我を侮る勿れ。

(3) 使未だ此[ここ]に至らず。

(4) 父母 我を愛せず。

説明:此は、事物・人物を表す場合は「これ」と読み、場所を表す場合は「ここ」と読みます。今回は至る場所なので「ここ」と読むのでした。

 

補足1:「否定語-副詞-他動詞-目的語」の否定倒置

 他動詞の前に副詞が挿入されるとき、否定倒置はどうなるかという問題です。

 

 この場合も、漢文では否定倒置が行われます。

 

 すなわち、以下のようになるということです。

本来の構造:否定語-副詞-他動詞-目的語

→否定倒置:否定語-目的語-副詞-他動詞

 

 まっ、「目的語が否定語の直後に来る」という否定倒置の原則通りですね。否定倒置の原則を正しく理解してる分には、覚えるのに苦労はありません。

 

例1:

本来の語順:諸国莫

→否定倒置:諸国莫信。

倒置訓読:諸国に之を深く信ずる(ところ)莫し。

倒置訳:諸国のどこもこれを深く信じない。

 

例2:

本来の語順:我亦不也。

→否定倒置:我亦不知也。

倒置訓読:我も亦た汝を詳らかには知らざるなり。

倒置訳:私もまたお前を詳らかには知らないのだ。

 

 一見、本当にこんな文あんのかよ、と、漢文慣れしてる人でも戸惑いそうな文型ですが、この手の文はマジであります。

 

インターネット上では、「漢籍電子文献」と検索すれば、台湾の中央研究院が公開している膨大な量の古漢籍の電子書籍版(免費使用版[=無料版])が見られますが、そこで「未之」で検索を掛けてみると、「未之嘗聞」「未之全信」なんて文が見られますからね。

 

 …まっ、とはいえ数はそう多くはありませんので、狙って探しでもしないとなかなかお目にかかれる文型ではないんですけどね…。

 

練習問題5:次の副詞を含んだ否定倒置文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)   倭国莫之嘗聞也。 嘗…嘗[かつ]て。

(2)   学者亦不之尽知。 尽…尽[ことごと]く。

(3)   我未汝全信。 全…全[まった]く。すっかり。完全に。全面的に。

(4)   汝勿我大罵。 大…大[おお]いに。ひどく。

 

練習問題6:次の書き下し文を、副詞を含んだ否定倒置文に復元してみよう。

(1)   百姓に我を詳らかに知る莫し。

(2)   我が父母 此[ここ]に常には在らざるなり。

(3)   王 我を妄[みだ]りに疑ふ勿れ。

(4)   我も亦た未だ之を嘗て聞かざるなり。

 

補足2:「否定語-助動詞-他動詞-目的語」の否定倒置

 他動詞の前に「助動詞」が挿入される時、否定倒置が起こるかという問題です。

 

 答えはYES。副詞の時同様、やはり否定倒置は起こります。

 

 構造を示せば以下の通りです。

本来の構造:否定語-助動詞-他動詞-目的語

→否定倒置:否定語-目的語-助動詞-他動詞

 

うむ。目的語を否定語の直後に持っていくという点も原則と何ら変わりありませんね。

 

例1:

本来の文型:倭人莫

→倒置文型:倭人莫逆。

倒置訓読:倭人に之に能く逆らふ莫し。

倒置訳:倭人の誰もこれに逆らうことはできない。

 

例2:

本来の文型:東夷之将未乎。

→倒置文型:東夷之将未討乎。

倒置訓読:東夷の将未だ此を討つべからざるか。

倒置訳:東夷の将はまだこいつを討つことができないのか。

 

練習問題7:次の助動詞を含む否定倒置文を、訓読・翻訳してみよう。

(1) 愚者不之能解也。 解…解[かい]す。解[]く。理解する。

(2) 汝未此欲還乎。 還…還[かえ]る。帰還する。

(3) 此国百姓莫之可作。 百姓…庶民。日本語と違い、「農民」ではない。

(4)   有才之人固不之須学也。 固…固[もと]より 有才之人…有才の人。才能有る人。

 

練習問題8:次の書き下し文を、助動詞を含む否定倒置文に復元してみよう。

(1)   男終[つひ]に之に見[まみ]ゆるを得ず。

(2)   王固[もと]より汝を重んずるを須[もち]ひざるなり。

(3)   此国に之を能く行ふ莫し。

(4)   男未だ之を娶[めと]らんと欲せざるか。 娶る…妻にもらう。嫁として迎える。

 

補足3:「否定語-前置詞句-他動詞-目的語」の否定倒置

 さて、副詞や助動詞が挿入された場合については先に説明した通りですが、それでは前置詞句の場合はどうなるのでしょうか。やはり副詞・助動詞と同じで否定倒置が起こるのか?

 

 答えはノーです。倒置は起こらず、基本文型通りの文型となります。

 

…え?何故って?知らんがな。探せど探せど、間に前置詞句が挿入された構造で否定倒置を起こしたものなど見つからないんだから仕方ない。

 

逆に見つかったのは「何不為我言之[何ぞ我が為に之を言はざる。]」という例文。「不為我言之。」の部分は「否定語-前置詞句-他動詞-目的語。」ですが、目的語が「之」という代名詞なのに倒置は生じていません。

 

ならまぁ、倒置は起こらないのだろう、ということで、当サイトでは「前置詞句が間に挿入されている場合は、否定倒置は起こらない」としておきます。

 

否定倒置が起こらない例なら、探せばもっとありそうですが、如何せん前置詞句挟んだ文型で倒置しない文なんて、狙って検索できるような文型じゃないんですよね。

 

今はとりあえず(偶然)見つけたこの一例を以て結論とさせていただきます。

 

 ともあれ、この方針にそって漢文を適当に自作しておきました。下線は否定語、太字斜体字は前置詞句、赤字が代名詞目的語です。

 

まぁ基本文型通りだということです。

 

例1:祖国為我

訓読:祖国に我が為に之を教ふる莫し。

訳:祖国の誰も私のためにこれを教えてくれなかった。

説明:「主題-否定語主語-前置詞句-他動詞-代名詞目的語」の構造ですね。「代名詞目的語」が「否定語主語」の直前に来てないことから、倒置を起こしていないと分かります。

 

例2:我以父

訓読:我未だ嘗て父を以て汝に命ぜず。

訳:私は未だ嘗て父としてお前に命令したことはない。

説明:「主語-否定語副詞-副詞-前置詞句-他動詞-代名詞目的語」の構造です。「代名詞目的語」が「否定語副詞」の直後に置かれていないことから、倒置を起こしていないと分かります。

 

 

補足4:前置詞の目的語の否定倒置

 さて、これまでは「否定語-他動詞-目的語」という、「他動詞の目的語の否定倒置」について勉強してきました。

 

 ですが、漢文の「目的語」には「前置詞の目的語」というのもあります。

 

なら、「否定語-前置詞-目的語-述語」→「否定語-目的語-前置詞-述語」という否定倒置はないのでしょうか。例えば、「我不与我語」→「我不我与語」のような倒置とかはないのでしょうか。

 

 うーん、面倒そうな問題ですね。でもご安心ください。答えはNOですから。

 

 台湾中央研究院の漢籍電子文献の膨大な漢文資料を相手に「不我与」「莫我為」など否定倒置として考えられる文型をいくつも検索かけてみましたが、結局一つとして前置詞の目的語が否定倒置を起こした文など見当たりませんでした。

 

 逆に、否定倒置を起こさない本来通りの文なら腐るほど見つかりました。「何不為我言之[何ぞ我が為に之を言はざる。]」「不與我同心。[我と心を同じうせず。]」「不能以之興懐[之を以て懐[おも]ひを興すこと能はず。]」とかね。

 

ってなわけで当サイトではこう結論づけています。

 

漢文の否定倒置は、前置詞の目的語に対しては起こらない、と。

 

 ってなわけでこの結論に沿って簡単な例文を自作しました。下の例を見て、前置詞の目的語は否定倒置を起こさないことを確認してください。

 

 下線部は否定語、太字黒は前置詞、太字赤は前置詞の目的語である代名詞です。

 

例1:祖国供飲食。

訓読:祖国に我が為に飲食を供する莫し。

訳:祖国の誰も私のために飲食を供給してはくれない。

説明:「主題-否定語主語-前置詞-代名詞目的語-述語。」の構造です。「否定語主語-前置詞-代名詞目的語」の部分より、否定倒置を起こしていないことが分かります。

 

例2:我自此語矣。

訓読:我 此より汝と語らず。

訳:私はこれよりお前とは語り合わない。

説明:「主語-前置詞句-否定語副詞-前置詞-代名詞目的語-述語-終助詞。」の構造です。「否定語副詞-前置詞-代名詞目的語」の部分より、否定倒置を起こしていないことが分かります。

 

練習問題9:次の前置詞句を含む漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)   祖国莫与我同心。 同…同[おな]じうす。

(2)   我不為汝言之。

(3)   群臣未以之告王。 以ABAを以てBに告ぐ。ABに知らせる。

(4)   汝勿以此事疑我。

 

練習問題10:次の書き下し文を、前置詞句を含む漢文へと復元してみよう。

(1)   此国に汝が為に命を賭[]す莫し。 賭命…命を賭[]す。命を賭ける。

(2)   嗚呼民 我と志を同じうせざるか。 志…志[こころざし]

(3)   王 之を以て我を誅[ちゅう]する勿れ。 誅…誅[ちゅう]す。誅殺する。

(4)   群臣に国の為に我に仕ふる莫し。

 

参考:否定倒置は絶対ではない?

 さて、否定倒置についてのルールを勉強し終わったところで一つお伝えしておきます。

 

 実は、漢文では否定倒置は絶対のルールではありません。

 

 否定倒置は、漢文では古代から起こる文法現象ですが、同時に古代からすでに「倒置が起こらないこともある」というやや不安定な現象だったりします。

 

 しかも、時代が下れば下るほど否定倒置は廃れていく傾向すらあります。

 

 つまり、「我不之知」を「我不知之」としたり、「我不之能告」を「我不能告之」としたりしても、別に漢文としては必ずしも間違いではないということですね。

 

 当サイトでは、一応規範的な漢文を目指しているというだけあって、否定倒置を原則としてはいますが、まぁそこまでこだわりたくないという人は否定倒置については頭の片隅に置いておく程度でも構いません。

 

 

 以上にて、今回の勉強はおしまいです。それではこの辺で。ごきげんよう。

 

関連ページ

当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第一:基本文型
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第一練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第二:副詞
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第二練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第三:前置詞句
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第三練習問題解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第四:助動詞
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第四練習問題解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第五:補語
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第五練習問題
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第六:兼語動詞
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第六練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第七:終助詞
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第七練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第八:接続詞
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第八練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第九:複主構文
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第九練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第十練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第十一:疑問倒置
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第十一練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第十二:存現倒置
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第十二練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第十三:感嘆倒置
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第十三練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第十四:強調倒置
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第十四練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第十五:主題構文
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第十五練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第十六:省略
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
文法第十六練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
句法第一:名詞句
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
句法第一練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
句法第二:形容詞句
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
句法第二練習解答
当ブログは、大学時代に漢文読解に勤しんでいた私が、日本語を漢文に翻訳する「漢作文」を気ままにやっていくものです。漢文法・漢作文に興味のある方はどうぞご利用ください。
詞法第一:数詞
今回は、数詞について学びます。
詞法第二:疑問詞
漢文における疑問詞について説明します。
語法
今回は漢文の語法について勉強します。
超速理解漢文法 閉講
超速理解漢文法もこれにて終了。終わりの挨拶をして、幕を閉じたいと思います。

ホーム RSS購読 サイトマップ
入門篇 初級篇 超速理解漢文法 原典講読1「論語注疏解経」 書籍・サイト紹介