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文法第九:複主構文

文法第九:複主構文

 みなさん、こんにちは。

 

 今回は、超速理解漢文法第9回ということで、複数の主語がある文、名付けて複主構文(私が便宜上勝手にそういってるだけです。)について勉強します。

複主構文とは?

 漢文には、一文でありながら複数の主語を持つ構文があります。今、これを「複主構文」と命名します。

 

 複主構文においては、大小二つの主語があります。今、大きい方の主語の「大主語」、小さい方の主語を「小主語」と呼ぶことにしましょう。

 

 大主語は常に小主語の前に置かれ小主語は意味内容的に常に大主語の属性を表すものとなります。

 

 ともあれ、文型と例文を見て行くととしましょうか。

 

 まずは文型の方から。

 

文型:大主語-小主語-述語。

訳:大主語は小主語が述語。

 

文型はご覧の通りです。普通の基本文型は「主語-述語。」でしたね。複主構文の場合は、単に主語の部分が「大主語-小主語」の二つになっただけです。

 

訳し方としては、「大主語は小主語が述語。」となります。日本語のイメージとしては、「象は鼻が長い。」「彼は性格が悪い。」などですね。鼻は象の所有物、性格も彼に属するもの=属性ですね。

 

複主構文において、小主語は常に大主語の属性であるとは、まぁ要するに、小主語は大主語の一部分であったり、所有物であったり、性格であったりするということですよ。そういうのをまとめて「属性」と表現しているわけであります。

 

 説明はこの辺までにして、そろそろ例文を見て行きましょう。

 

具体例

例1:長。

訓読: 長し。

訳:象は鼻が長い。

説明:小主語「鼻」は大主語「象」の一部分ですね。故に「鼻」は「象」の属性であると言えます。

 

例2:頗美。

訓読: 頗る美し。

訳:女は髪がとても美しい。

説明:小主語「髪」は大主語「女」の一部分ですね。それ故「髪」は「女」の属性であると言えそうです。

 

例3:国王暴而常疑人。

訓読:国王 暴にして常に人を疑ふ。

訳:国王は性格が乱暴でいつも人を疑っている。

説明:小主語「性[=性格]」は大主語「国王」の一部分ですね。それ故「性」は「国王」の属性ですね。

 

例4:時蔑之。

訓読:時に心に之を蔑む。

訳:おりしも私は心の中で之を軽蔑した。

説明:小主語「心」は大主語「我」が持つものであります。だから「心」は「我」に属する、属性であると言えますね。訓読で「心に」となっているのは、「心」という字が小主語に成る場合の慣習みたいなものです。中国語的には、「時に私は心が之を蔑む」ですね。

 

 例文では、人や動物を大主語にしてしまいましたが、別に大主語は生き物でなくてもよいですよ。

 

例えば「倭国国土不広。[倭国 国土広からず]」=「日本は国土が広くない。」大主語は倭国という国で、小主語はそのうちの「国土」という属性です。まぁ難しく考えず、日本語の「ABが述語。」は漢文では「A-B-述語。」と表現すると覚えればよいのです。

 

補足1:よく使われる複主構文

 ちなみに、漢文でよく出くわす複主構文としては、以下のようなものがあります。これらはある程度訳し方とか覚えていないと読みづらい連中なので、慣用表現として覚えてしまうことをお勧めします。

 

@主語--述語。

訓読:主語 [せい]述語。

訳:主語は性格が述語。主語は述語する性格である

 

例:此翁悪犬。

訓読:此の翁  犬を悪[にく]む。

訳:この翁は性格が犬を嫌う。=この翁は犬を嫌う性格であった

 

A主語--述語。

訓読:主語心に述語。

訳:主語は心中/心の中では述語。

例:恨之也。

訓読:心に之を恨むなり。

訳:民は心の中ではこれを恨んでいたのだ。

 

 因みに、「心」は「意」という漢字を使うこともあります。訓読はやはり「主語意[こころ]に述語。」で、変わりありません。

例:恨之也。

訓読:[こころ]之を恨むなり。

訳:心の中ではこれを恨んでいたのだ。

 

補足2:動詞「有」「無」を用いた複主構文

 あまりお目にはかかりませんが、ごく稀ながら存在する厄介な複主構文に、動詞「有」「無」を用いたものがあります。

 

 この複主構文は、文型がやや厄介なので注意が必要です。

 

文型:大主語-小主語-場所主語-/-目的語。

訓読:大主語 小主語 場所主語に目的語有り/無し。

訳:大主語は小主語が場所主語に目的語がある/ない。

 

例1:孔明知略天下無双。

訓読:孔明 知略 天下に[なら]び無し。

訳:孔明は知略が天下に並ぶものが無い。

 

例2:我国兵力内外凡有十余万。

訓読:我が国 兵力 内外に凡そ十余万有り。

訳:我が国は兵力が内外に合わせて十万余りある。

 

練習問題

練習問題1:次の複主構文の漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)    王性不信人。

(2)    我意以為其言不足信。

(3)    倭国領土小而尚足謂大国。

(4)    獣爪鋭而人兵利。

(5)    東夷武勇天下有名。

 

練習問題2:次の書き下し文を、複主構文の漢文へと復元してみよう。

(1)    我 心に此の事を恨む。

(2)    男 性 色を好みて酒を嗜む。

(3)    中華 国土遠大にして大国と謂ふべし。

(4)    倭人 長[みのたけ]高からず。

(5)    王女 美貌 世に類[たぐひ]無し。

 

参考1:主語の後ろに入れる前置詞や主後副詞はどこに入れるの?

 複主構文は、主語が複数ある構文です。そうなると、主後副詞なんかは大主語の後ろに入れるべきなのか、小主語の後ろに入れるべきなのか悩みますが、実際どっちなんでしょうか。

 

 結論を言うと、ぶっちゃけ2015/07/11時点で、私にはワカリマセン。そもそも大主語と小主語の間に他の要素が入る複主構文なんて見たことないからね。

 

 なので当サイトでは現段階では原則「大主語と小主語の間には何も挿入しない」という方針を掲げたいと思います。

 

 が、漢作文なんかの時、「これだと言いたいこと表現できないよ〜」ってこともあるかもしれませんので、どうしても他の要素入れたい場合は以下のようにルールを定めます。

 

規則:「修飾する主語の後ろにぶち込め。」

(以下、存在するか不明の創造漢文です。)

 

例1:大主語を修飾したい場合。→大主語の直後にぶち込もう。

例文:長。

訓読:も亦た  長し。

訳:もまた鼻が長い。

説明:他の動物も鼻が長い。象もまた鼻が長い。みたいな文脈で使えそうな文ですね。「亦」が修飾しているのは象そのもの、という場合の文です。

 

例2:小主語を修飾したい場合。→小主語の直後にぶち込もう。

例文:大。

訓読: も亦た大なり。

訳:象は鼻もまた大きい。

説明:象は色々なところが大きいが、更に鼻までもが大きい、という感じの文脈で使えそうな文です。「亦」が修飾しているのは小主語「鼻」、という場合の創造漢文であります。

 

 まぁ実際の漢文でこういう文にお目にかかれれば、正式採用と相成りますが、なかなか見つからないねぇ、こういう文は。

 

 まっ、そのうち時間あれば探してみることにしてみますよ、はい。

 

参考2:大主語と小主語は「大主語の小主語」と訳しちゃだめなの?

 ところで、今回の複主構文の訳を見ていて、「あれ?これ、『大主語は小主語が』じゃなくて、『大主語の小主語は』と訳した方が自然じゃね?なんでわざわざ「〜は…が」って訳すの?」って思う人もいるかと思います。

 

例えば、「象鼻長。」なら、「象 鼻長し。」じゃなくて「象の鼻長し。」とか。「中国国土広大。」なら、「中国 国土広大なり。」じゃなくて「中国の国土広大なり」とか。そんな風にとらえることもできるんじゃないか、って思う人もいるかと思うわけです。

 

 まぁこれに関しては、ぶっちゃけ私もよくわかんないです。ただ、大学の授業なんかでも、この手の構文は(現代中国語・古代中国語問わず)「大主語は小主語が」と解説し、「のじゃないよ〜」と注意されます。

 

 で、実際この辺は我々日本人的には「どっちでもいんじゃね?」と思ってしまうので、中国人に「どっちなの?」って授業の演習とかで時々聞くことがあります(教授でさえ結構迷います)

 

 すると、たいていの場合、中国の方は、「『の』じゃなくて『は』の方で捉えてる。」との回答を寄越すわけです。

 

 で、我らジャッパニーズはというと、「そっかー。本場の中国の人がそういうんだからそうなんだねぇ。よくわかんないけど。」と、理解しているのかいないのか分からない謎の納得をするわけです。

 

結局「大主語-小主語」は基本「大主語は小主語が」と訳そうという暗黙の経験則が出来上がるわけでありました。はい。

 

まぁぶっちゃけ、中国語では日本語の所有「の」に当たる言葉に「之」(古代)だの「的」(現代)だのありますが、それらは語呂次第で結構省略されるので日本人的には「大主語は小主語が」なのか「大主語の小主語」なのか、よく分かんないってことも多いのですよ。

 

その辺は、やっぱり言語感覚が違うんですかね、中国語と日本語とでは。

 

終わりに

 以上にて、今回の漢文の勉強はおしまいです。

 

 それでは今回もこの辺で。ごきげんよう。

 

 

 

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