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文法第八:接続詞

超速理解漢文法文法第八:接続詞

 みなさん、こんにちは。

 

 今回は、漢文の接続詞の語順について勉強します。

漢文の接続詞について

漢文の接続詞は、基本文型に挿入することができます。挿入可能箇所は三か所。一つは前文文頭、一つは前文の主語の後ろ、一つは後文の文頭です。

 

今、前文の文頭に置かれる接続詞を「前文文頭接続詞」、前文の主語の後ろに置かれる接続詞を「前文主後接続詞」、後文の文頭に置かれる接続詞を「後文文頭接続詞」と命名します。

 

 接続詞の挿入について、基本文型を交えた説明にすると、以下のような感じになります。

 

@前文文頭接続詞

文型:接続詞-主語-述語、主語-述語。

 

A前文主後接続詞

文型:主語-接続詞-述語、主語-述語。

 

B後文文頭接続詞

文型:主語-述語、接続詞-主語-述語。

 

 以下、@〜Bについて、詳しく見て行きましょう。

 

その前に―[参考]前文とは?後文とは?

前文、後文というのは、二つの文のうちの、前の文と後ろの文のことです。

 

例えば、「我愛父母、父母不慈[私は父母を愛したが、父母は(私を)愛さなかった]。」という文。これは、「我愛父母」という主語-述語からなる一文と、「父母不慈」という主語-(副詞)-述語からなる一文の二文からできていますね。

 

で、この二文のうち、前にある「我愛父母」が前文、後ろにある「父母不慈」が後文というわけです。

 

@前文文頭接続詞

文型:接続詞-主語-述語、主語-述語。

 

前文文頭接続詞には、「若[[]し〜ば]」「縦[[たと]ひ〜とも]」「雖[〜と雖[いへど]]」「苟[[いやしく]も〜ば]などがあります。「若」「苟」は仮定「もし〜ば」、「縦」「雖」は譲歩「たとえ〜とも」の意味を表す接続詞です。

 

例1:倭人、我()話倭語。(接続詞-主語-述語、主語-(副詞)-述語」)

訓読:若し倭人なら、我(必ず)倭語を話さん。

訳:もし私が倭人なら、私は(必ず)倭の言葉を話すだろう。

 

例2:(千年)、我()()()(接続詞-主語-述語-(補語)、主語-(副詞)-(副詞)-述語-(終助詞))

訓読:縦ひ[](こと千年なる)とも、我(必ず)忘れ(ざら)ん。

訳:たとえ時が(千年)経ようとも、私は(必ず)忘れ(ない)だろう。

 

例3:官軍殺賊、人()以為鬼()(接続詞-主語-述語、主語-(副詞)-述語-(終助詞))

訓読:官軍 賊を殺すと雖も、人以て鬼と為さ(ざる)(なり)

訳:たとえ官軍が賊を殺そうとも、人は(それを以て)鬼とみなさ(ない)(のである)

説明:「以」は前置詞ですが、「以〜為…」は慣用表現で「〜を…とみなす」の意です。便宜上、ここでは他動詞の一種とみなしました。なお、今回は「以〜」の「〜」が省略されています。

 

例4:(以論語)伝仁無道之輩、此()改心()(接続詞-主語-(前置詞句)-述語、主語-(副詞)-述語-(終助詞))

訓読:苟も (論語を以て)仁を無道の輩に伝へ、此(必ず)心を改めん。

訳:もし私が(論語でもって)仁義を道徳のない輩に伝えれ、こいつは(きっと)心を改めるだろう。

 

補足1:また、仮定の接続詞には「使」「令」などもあります。これらは使役動詞から転じてできたものです。

訓読の仕方も、「使[]/[]し〜ば」というのと、「主語をして述語しめば」という使役動詞的な読み方との二通りがあります(訳も、使役の場合は「主を述語させれば」となります)

学校では、どちらかというと後者の方で教えると思います。これは、日本の訓読では、伝統的に使役的に読んで来たからです。

まぁ、漢文としては、どっちも仮定「もし〜ば」の意味を表す接続詞に過ぎませんので、これは訳し方の問題、つまり日本語の問題ですね。なのでまぁ、翻訳や訓読の際には、使役的な方かただの仮定か、好きな方を選んでいけばよいかと思います。

 

例1:使倭人、我()話倭語。(接続詞-主語-述語、主語-(副詞)-述語」)

訓読1:使し倭人なら、我(必ず)倭語を話さん。

訓読2:をして倭人ならしめば、我(必ず)倭語を話さん。

訳1:もし私が倭人なら、私は(必ず)倭の言葉を話すだろう。

訳2:私を倭人であらせたならば、私は(必ず)倭の言葉を話すだろう。

 

例2:(以論語)伝仁無道之輩、此()改心()(接続詞-主語-(前置詞句)-述語、主語-(副詞)-述語-(終助詞))

訓読1:令し (論語を以て)仁を無道の輩に伝へ、此(必ず)心を改めん。

訓読2:をして(論語を以て)仁を無道の輩に伝へしめば、此(必ず)心を改めん。

訳1:もし私が(論語でもって)仁義を道徳のない輩に伝えれ、こいつは(きっと)心を改めるだろう。

訳2:私に(論語でもって)仁義を道徳のない輩に伝えさせれば、こいつは(きっと)心を改めるだろう。

 

 この他、仮定の接続詞には、「仮[仮に]」や、これと他の仮定の接続詞を組み合わせた「仮使」「仮若」「仮令」(三つとも文脈に応じて「モ-し」「タト-ひ」と訓読)などさまざまなものがありますが、単語の問題なのでこの辺は割愛します。

 

練習問題1:次の接続詞を含む漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)若汝不行我亦不行。

(2)使我率軍国軍必百戦百勝矣。百戦百勝…動詞。

(3)雖我中華之王諸国尚有人嘲之。 尚…尚[]ほ。依然として。

(4)縦神実在我国之民蓋不頼。 実…実[まこと]に。本当に。

(5)仮王重用我群臣必不服之。 不服之…之を不服とす。

説明:「百戦百勝」は、正式には「百」が回数を表す副詞で、「戦」と「勝」とが動詞。更に「戦」は複文構造の「前文」で、「勝」は「後文」に当たります。従ってひたすら厳密に訓読しようとすれば「百[もも]たび戦はば百たび勝たん。」のようになりますが、まぁここまで開いて訓読する人はまずいません。普通に「百戦百勝」を一語の動詞として扱い、読んだ方がいいです。

 

練習問題2:次の書き下し文を、接続詞を含む漢文へと復元してみよう。

(1)苟も晩年我 之を悔いば、我が人生も亦た嗤ふに足る哉。

(2)民衆 王を恨むと雖も、王 之を省みざらん。

(3)彼をして天下に王たらしめば、国必ず太平を焉[ここ]に得ん。

(4)縦ひ汝 我を悪[にく]むとも、我は終身汝を愛せん。

(5)仮若[]し今汝 之を避けば、後世苦難応に愈[いよいよ]増すべし。

語釈:王たり→王。 愈→ますます、の意。

 

A前文主後接続詞

文型:主語-接続詞-述語、主語-述語。

 前文主後接続詞には、「[若し〜ば]」「[苟も〜ば]」「[縦ひ〜とも]」「[〜と雖も]」などがあります。これらは@の前文文頭接続詞でもありましたね。

意味も@の時と変わらないのが原則です。が、原則あるところに例外あり、「雖」に関しては、訓読は同じでも意味は逆接「〜けれども」に転じますので、そこは注意してください。

 

例1:倭人、我()話倭語。(主語-接続詞-述語、主語-(副詞)-述語」)

訓読:若し倭人なら、我(必ず)倭語を話さん。

訳:私がもし倭人なら、私は(必ず)倭の言葉を話すだろう。

 

例2:(千年)、我()()()(主語-接続詞-述語-(補語)、主語-(副詞)-(副詞)-述語-(終助詞))

訓読:縦ひ[](こと千年なる)とも、我(必ず)忘れ(ざら)ん。

訳:時がたとえ(千年)経ようとも、私は(必ず)忘れ(ない)だろう。

 

例3:官軍殺賊、人()以為鬼()(接続詞-主語-述語、主語-(副詞)-述語-(終助詞))

訓読:官軍 賊を殺すと雖も、人以て鬼と為さ(ざる)(なり)

訳:官軍が賊を殺したけれども、人は(それを以て)鬼とみなさ(ない)(のである)

説明:「雖」が文頭にある「官軍殺賊」の時は、訓読は同じで訳は「官軍が賊を殺そうとしても」です。で今回のように述前にある「官軍殺賊」の場合は「官軍が賊を殺したけれども」。「たとえ〜とも」→「〜けれども」と意味が違うのです。ここは注意してください。

 

例4:(以論語)伝仁無道之輩、此()改心()(接続詞-主語-(前置詞句)-述語、主語-(副詞)-述語-(終助詞))

訓読:苟も(論語を以て)仁を無道の輩に伝へ、此(必ず)心を改めん。

訳:私がもし(論語でもって)仁義を道徳のない輩に伝えれ、こいつは(きっと)心を改めるだろう。

 

注意:もともと使役動詞であった「使」「令」や、熟語の「仮若」「仮使」「仮令」などは、この前文主後接続詞としては使われないようなので(辞書や文法書の用例を確認する限り、皆文頭でした。)、そこは混同しないよう注意してください。

 また、「仮」の字も文頭以外で使われるか不明なので、当サイトでは「仮」も文頭のみで使える接続詞としておきます。

 

練習問題3:次の接続詞を含む漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)汝若不行我亦不行。

(2)我苟率軍国軍必百戦百勝矣。百戦百勝…動詞。

(3)我雖中華之王諸国尚有人嘲之。 尚…尚[]ほ。依然として。

(4)神縦実在我国之民蓋不頼。 実…実[まこと]に。本当に。

 

練習問題4:次の書き下し文を、接続詞を含む漢文へと復元してみよう。

(1)晩年我苟も之を悔いば、我が人生も亦た嗤ふに足る哉。

(2)民衆 王を恨むと雖も、王 之を省みざらん。

(3)彼若し天下に王たらば、国必ず太平を焉[ここ]に得ん。

(4)汝縦ひ我を悪[にく]むとも、我は終身汝を愛せん。

 

B後文文頭接続詞

文型:主語-述語、接続詞-主語-述語

 後文文頭接続詞には、「[[しか]して]or[[しか]るに]or[[しか]れども]or(置き字)」「[[しか]れども]」「[ゆゑ]に」「[すなは]ち」などがあります。「而」は単純接続、「然」は逆接、「故」は理由、「則」は仮定を表す接続詞です。

単純接続とは、単に文章を繋げるだけの働きをする接続のことで、文脈によって「〜て/そして」「〜ので/だから」「〜けれども/しかし」と訳し分ける必要があります。

 

例1:我倭人、汝漢人()(「主語-述語、接続詞-主語-述語-(終助詞))

訓読:我は倭人なり、而して汝は漢人なり。

訳:私は倭人で、そしてお前は漢人である。

 

例2:時経(三年)我忘其事。(「主語-述語-(補語)接続詞-主語-述語」)

訓読:時経る(こと三年なら)ば、則ち我 其の事を忘れん。

訳:時が(三年)経てば、私はそのことを忘れるだろう。

 

例3:官軍殺賊、()以為鬼。(「主語-述語、接続詞-主語-(副詞)-述語」)

訓読:官軍 賊を殺す、然れども人以て鬼と為さ()

訳:官軍が賊を殺したが、しかし人は(それを)鬼とみなさ(なかった)

 

例4:我教人仁道(以論語)(三千人)()()此国()有仁者()(「主語-述語-(前置詞句)-(補語)-(終助詞)接続詞-(副詞)-主語-(副詞)-述語-(終助詞))

訓読:我 人に仁道を教ふ(るに論語を以てする)(こと三千人なり)故に()此の国に(多く)仁者有り。

訳:私は(三千人に)(論語でもって)人に仁の道を教えた、だから()この国には(多く)仁徳のある者がいる(のだ)

 

 ちなみに、例では「主語-述語接続詞-主語-述語」というように、前文と後文を「、」でつないでいますが、これは中国人が句読点を付けた場合のやり方です。

 日本では、「而」「則」の例を除けば、この構造の文は伝統的に「主語-述語。接続詞-主語-述語」というように、「。」で一旦区切り、二文にしてしまいます

 例えば、「官軍殺賊、然()以為鬼。」なら「官軍殺賊。然()以為鬼。」とするのが日本人的な言語感覚ですね。「〜したしかし〜。」という風に、「。」で一旦文を区切っちゃうわけです。「故」の訳「だから」の場合も、日本的には「〜した。だから〜。」と、二文に分けますよね。

 微妙なところですが、中国人は普通「しかし」「だから」は「、」で繋げ、日本人は「。」で区切る。そんな言語感覚の違いがあります。

 当サイトでは、漢文=古漢語という立場で見てますので、文も従来のように日本人的な感覚に合わせるのではなく、本場中国に近い言語感覚で文を区切るようにしています

なので、訓読もそれに合わせて「〜す、故に」「〜す、然れども」みたいに句読点使っちゃいますので、そこは誤植とかじゃないんだぞと留意していただければと思います。

 

補足1:「是故」「是以」の二者もまた後文文頭接続詞です。二者は「故」一字の時とほぼ同じ意味を表し、「是[]の故/[ゆゑ]に」と訓読します。日本語訳としては「こういうわけで」と訳されることが多いです。

なお、受験を経験した人なら分かるかと思いますが、「是以」はこのほか、「是[ここ]を以[もつ]て」とも訓読されます。「ここをもつて」は受験で習うほどの特徴的な訓読語ですからね。日本人的には教養として、こちらの訓読を使った方がいいかもしれませんね。まぁ完全に好みの問題ですが。

 

例1:我教人仁道(以論語)(三千人)()是故()此国()有仁者()(「主語-述語-(前置詞句)-(補語)-(終助詞)接続詞-(副詞)-主語-(副詞)-述語-(終助詞))

訓読:我 人に仁道を教ふ(るに論語を以てする)(こと三千人なり)是の故に()此の国に(多く)仁者有り。

訳:私は(三千人に)(論語でもって)人に仁の道を教えた、こういうわけで()この国には(多く)仁徳のある者がいる(のだ)

 

例2:我教人仁道(以論語)(三千人)()是以()此国()有仁者()(「主語-述語-(前置詞句)-(補語)-(終助詞)接続詞-(副詞)-主語-(副詞)-述語-(終助詞))

訓読:我 人に仁道を教ふ(るに論語を以てする)(こと三千人なり)[]の以[ゆゑ]/[ここ]を以て()此の国に(多く)仁者有り。

訳:私は(三千人に)(論語でもって)人に仁の道を教えた、こういうわけで()この国には(多く)仁徳のある者がいる(のだ)

 

補足2:時に「而」「然」の二者は組み合わさって「然而[然而[しか]れども]」二字となり、それが逆接の意味であることをはっきり示す逆接の接続詞となります。意味は「然」と同じです。

 

例:官軍殺賊、然而()以為鬼。(「主語-述語、接続詞-主語-(副詞)-述語」)

訓読:官軍 賊を殺す、然而 [しか]れども人以て鬼と為さ()

訳:官軍が賊を殺したが、しかし人は(それを)鬼とみなさ(なかった)

 

練習問題5:次の接続詞を含む漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)   王課民重税故民皆恨之也。

(2)   女慕此男而男不然。

(3)   倭国今已大国矣然国力日衰。

(4)   臣知其事而王亦知之。

 

練習問題6:次の書き下し文を、接続詞を含む漢文へと訓読・翻訳してみよう。

(1)   父母 子を疎めども子 之を慕ふ。

(2)   王 臣の言を聞かず、是の故に王宮に臣の之に進言する無し。

(3)   王 臣の言を聞かず、是を以て王宮に臣の之に進言する無し。

(4)   父母 子を疎む、然而れども子 之を慕ふ。

 

 

補足3:「則」と仮定接続詞の併用

 則の字は、しばしば「若」「苟」「使」「令」などの、仮定の接続詞と一緒に用いられます。なお、ここで使う前文に置く接続詞は、@の前文文頭でもAの後文主後接続詞でも結構です。

 

 以下、例文を大量に挙げますが、重要なのはその分の構造を確認すること。なので漢文そのものを見て行くように心がけてください。訓読と訳は、漢文に集中できるように、網掛けしておきます。

 

例1:倭人()話倭語。(仮定接続詞-主語-述語-主語-(副詞)-述語」)

訓読:若し倭人なら則ち(必ず)倭語を話さん。

訳:もし私が倭人なら、私は(必ず)倭の言葉を話すだろう。

 

例2:(以論語)伝仁無道之輩()改心()(仮定接続詞-主語-(前置詞句)-述語-主語-(副詞)-述語-(終助詞))

訓読:苟も (論語を以て)仁を無道の輩に伝へ則ち(必ず)心を改めん。

訳:もし私が(論語でもって)仁義を道徳のない輩に伝えれ、こいつは(きっと)心を改めるだろう。

 

例3:使倭人()話倭語。(仮定接続詞-主語-述語-主語-(副詞)-述語」)

訓読1:使し倭人なら則ち(必ず)倭語を話さん。

訓読2:をして倭人ならしめば則ち(必ず)倭語を話さん。

訳1:もし私が倭人なら、私は(必ず)倭の言葉を話すだろう。

訳2:私を倭人であらせたならば、私は(必ず)倭の言葉を話すだろう。

 

例4:(以論語)伝仁無道之輩()改心()(仮定接続詞-主語-(前置詞句)-述語-主語-(副詞)-述語-(終助詞))

訓読1:令し (論語を以て)仁を無道の輩に伝へ則ち(必ず)心を改めん。

訓読2:をして(論語を以て)仁を無道の輩に伝へしめば則ち(必ず)心を改めん。

訳1:もし私が(論語でもって)仁義を道徳のない輩に伝えれ、こいつは(きっと)心を改めるだろう。

訳2:私に(論語でもって)仁義を道徳のない輩に伝えさせれば、こいつは(きっと)心を改めるだろう。

 

例5:倭人()話倭語。(接続詞-主語-述語-主語-(副詞)-述語」)

訓読:仮に倭人なら則ち(必ず)倭語を話さん。

訳:仮に私が倭人なら、私は(必ず)倭の言葉を話すだろう。

 

例6:仮若倭人()話倭語。(接続詞-主語-述語-主語-(副詞)-述語」)

訓読:仮若[]倭人なら則ち(必ず)倭語を話さん。

訳:もし私が倭人なら、私は(必ず)倭の言葉を話すだろう。

 

例7:仮使倭人()話倭語。(接続詞-主語-述語-主語-(副詞)-述語」)

訓読:仮使[]倭人なら則ち(必ず)倭語を話さん。

訳:もし私が倭人なら、私は(必ず)倭の言葉を話すだろう。

 

例8:仮令(以論語)伝仁無道之輩()改心()(接続詞-主語-(前置詞句)-述語-主語-(副詞)-述語-(終助詞))

訓読:仮令[] (論語を以て)仁を無道の輩に伝へ則ち(必ず)心を改めん。

訳:もし私が(論語でもって)仁義を道徳のない輩に伝えれ、こいつは(きっと)心を改めるだろう。

 

例9:倭人()話倭語。(主語-接続詞-述語-主語-(副詞)-述語」)

訓読:若し倭人なら則ち(必ず)倭語を話さん。

訳:私がもし倭人なら、私は(必ず)倭の言葉を話すだろう。

 

例10:(以論語)伝仁無道之輩()改心()(接続詞-主語-(前置詞句)-述語-主語-(副詞)-述語-(終助詞))

訓読:苟も(論語を以て)仁を無道の輩に伝へ則ち(必ず)心を改めん。

訳:私がもし(論語でもって)仁義を道徳のない輩に伝えれ、こいつは(きっと)心を改めるだろう。

 

練習問題7:次の接続詞を含む漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)若汝不行則我亦不行。

(2)使我率軍則国軍必百戦百勝矣。百戦百勝…動詞。

(3)愚人王於中華則蛮族必相競而侵之矣。

(4)仮王重用則我群臣必不服之。 不服之…之を不服とす。

(5)汝若不行則我亦不行。

(6)我苟率軍則国軍必百戦百勝矣。百戦百勝…動詞。

(7)愚人王於中華則蛮族必相競而侵之矣。

 

練習問題8:次の接続詞を含む漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)苟も晩年我 之を悔いば、則ち我が人生も亦た嗤ふに足る哉。

(2)民衆 王を恨まば、則ち王 之を省みん。

(3)彼をして天下に王たらしめば、則ち国必ず太平を焉[ここ]に得ん。

(4)仮若[]し今汝 之を避けば、則ち後世苦難応に愈[いよいよ]増すべし。

(5)民衆 王を恨まば、則ち王 之を省みん。

(6)彼若し天下に王たらば、則ち国必ず太平を焉[ここ]に得ん。

(7)晩年我苟も之を悔いば、則ち我が人生も亦た嗤ふに足る哉。

 

 

その他…接続詞の例外

 接続詞には、前回のような文と文とをつなぐものの他、@述語と述語とをつなぐものA名詞と名詞とをつなぐものもあります。

 

 前者のタイプで一番よく目にするのは「而」、後者のタイプでは「与」がよく使われます。

 

@のタイプもAのタイプも本当は色々あるようですが、私が学生時代読んだ、中国の南北朝時代以降の漢文では、「而」と「与」以外ほとんどお目にかかった覚えがないので、当サイトではこの二つ中心に、例外として取り上げることとします。

 

@述語と述語とをつなぐ「而」

而」はしばしば述語と述語をつなぎます。

 

 基本文型を交えた形に直すと、以下のような感じですね。まぁ述語が二つある時点で基本文型からずれているのですが。

 

文型:主語-述語1--述語2

 

 文章を読む際には、これだけ覚えていれば問題ないのですが、漢作文をするにあたってはこれだけだとちょっと物足りないところがあります。なので、もう少し詳しい説明に入っていきますね。

 

今、述語を三分し、名詞がそのまま述語となったものを「名詞述語」(1課第一文型参照)、目的語を取らない自動詞が述語となったものを「自動詞述語」(1課第二文型参照)、他動詞とその目的語から成る述語を「他動詞述語」(1課第三文型・第四文型参照)と命名します。

 

「而」が二つの述語をつなぐ時、概ね以下のルールに従うことになります。漢作文の参考にしてみてください。

 

a.原則:先に行われる動作を述語1とし、次に行われる動作を述語2とする。

例1:男討賊(「主語-述語1--述語2)

訓読:男 賊を討ち帰る

訳:男は賊を討伐し帰った

説明:二文に分ければ「男討賊。[男 賊を討つ。]」と「男帰。[男帰る。]」です。動作の順番は、「討賊」が先、「帰」が後です。なので語順も、先の動作=述語1、後の動作=述語2より、「討賊--帰」となります。

 

例2:女(二年)()()見之(「主語-述語1-(補語)--(副詞)-(助動詞)-述語2)

訓読:女待つ(こと二年にし)(始めて)之に見ゆ(るを得たり)

訳:女は(二年)待っ(ようやく)これに会う(ことができた)

説明:二文に分ければ「女待二年。[女待つこと二年なり。]」と「女始得見之。[女始めて之に見ゆるを得たり。]」の二文です。「待」は先に行われる動作、「見之」は後に行われる動作です。先の動作=述語1、後の動作=述語2より、語順は、「待(二年)--(始得)見之。」となります。

 

例3:(嗚呼)住日本悪之()((感動詞)-主語-述語1--述語2-(終助詞))

訓読:(嗚呼)日本に住み之を悪[にく]()

訳:(ああ)、お前は日本に住んでいながらこれを嫌悪している(のか)

説明:二つの文に分ければ(「嗚呼」と「乎」を省きます)、「汝住日本。[汝 日本に住む。]」と「汝悪之。[汝 之を悪む]」ですね。動作の順番的には「住日本」が先、「悪之」が後ですね。よって先の動作=述語1、後の動作=述語2より、「住日本--悪之」という語順になります。

 

例4:我滅諸国矣。

訓読:我 諸国を滅ぼし王たり

訳:私は諸国を滅ぼし王となった

説明:二つの文に分ければ(「矣」を省きます)、「我滅諸国。[我 諸国を滅ぼす。]」と「我王。[我は王なり。]」ですね。先の動作は「滅諸国」、後の動作が「王」なので、先の動作=述語1、後の動作=述語2より、「滅諸国--王」となります。

 なお、名詞述語が「而」の後ろに来る場合は、「なり」ではなく「たり」と読みます。意味も、「而」の後ろだと動詞的な「となる」になります。

 

b.例外:述語1・述語2に時間的な関係がない時は、名詞述語>自動詞述語>他動詞述語の順番に述語1となる。

言い換えると、名詞述語があるときは名詞述語が述語1となり、残りが述語2となる。名詞述語がなくて自動詞述語があるときは、自動詞述語が述語1となり、残りが述語2となる。ってな感じです。

 

例1:我妻美人有才(「主語-述語1--述語2)

訓読:我が妻は美人にして才有り

訳:私の妻は美人才能がある

説明:二つの文に分ければ、「我妻美人。[我が妻美人なり。]」「我妻有才。[我が妻才有り。]」つまり、「美人」は名詞述語で、「有才」は他動詞述語です。名詞述語が述語1、残りが述語2となるので、語順が「美人--有才」となったわけです。

 

例2:(嗚呼)王之子暗愚((感動詞)-主語-述語1--述語2)

訓読:(嗚呼)先王の子にして暗愚なり

訳:(ああ)、先王の子は、君主でありながら愚かである

説明:二つの文に分ければ(感動詞は省く)、「先王之子君。[先王の子君なり。]」「先王之子暗愚。[先王の子暗愚なり。]」です。つまり、「君」は名詞述語で、「暗愚」は自動詞述語となります。名詞述語が述語1、残りが述語2なので、語順が「君--暗愚」となるわけです。

 

例3:其王聡明()治国(「主語-述語1--(副詞)-述語2)

訓読:其の王聡明にして(善く)国を治む

訳:その王は聡明(上手に)国を治めた

説明:二文に分ければ「其王聡明。[其の王聡明なり。]」と「其王善治国。[其の王善く国を治む。]」ですね。名詞述語はどちらの文にもなくて、「聡明」は自動詞述語で且つ人の性質を表した形容詞です。で、残りの述語「治国」は他動詞述語です。名詞述語がない、且つ自動詞述語=形容詞述語。故に自動詞述語を述語1とし、残りを述語2とすることになります。かくして語順は、「聡明--()治国」と相なるわけであります。

 

例4:倭王尊大有才於武。(「主語-述語1--述語2-(前置詞句))

訓読:倭王尊大なる武に才有り

訳:倭王は尊大ではあった武に才能があった

説明:二文に分ければ「倭王尊大。[倭王尊大なり。]」と「倭王有才於武。[倭王 武に才有り。]」ですね。どちらの文にも名詞述語はなくて、「尊大」は人の性質を表した形容詞述語です。名詞述語がなくて形容詞述語があるときなので、形容詞述語=述語1、残り=述語2より、語順は「尊大--有才(於武)」となります。

 

 以上、長々と説明しましたが、まぁ要するに、一般に、漢文を読んでみると、@原則:先の動作>後の動作、A時間関係ない時:名詞述語>自動詞述語>他動詞述語、のような優先順位で述語1となっている印象を受けるということです。はい。

 

練習問題9:次の「而」を含む漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)   嗚呼汝君而不愛其国乎。

(2)   王子聡明而明於政。

(3)   我討諸国而遂覇天下。 覇天下=覇於天下。

(4)   男有才而不信人故衆亦不信此男。

 

説明:覇天下=覇於天下についてですが、漢文とは語調・語数というやつを無駄に重視していまして、しばしば文尾におく前置詞句の前置詞「於」は省略されます。まぁ作文の際はあまりやらない方がいいのでしょうが、今回「我討諸国」と「遂覇天下」で綺麗に四字四字になるので、「於」を省略した次第です。

 

練習問題10:次の書き下し文を、「而」を含む漢文に復元してみよう。

(1)   嗚呼汝子にして其の父を尊ばざるか。

(2)   王暗愚にして国を治むる能はず。

(3)   群臣 之を知るも敢へて言はず。

(4)   国王 賊を討ちて天下を焉に平らぐ。

 

A名詞と名詞をつなぐ「与」

「与」は名詞と名詞とをつなぎます。これも接続詞と呼んでいいでしょう。名詞は主語になるか、他動詞の目的語となるか、前置詞の目的語となるかなので、一応可能性のある文型としては以下の三つになりますね。

 

「与」の文型

@名詞--名詞-述語。→この時「名詞--名詞」が「主語」です。

 

A主語-他動詞-名詞--名詞。→この時「名詞--名詞」が他動詞の目的語。従って、「他動詞-名詞--名詞」が述語部分となります。

ちなみに授与動詞の場合、普通「他動詞-目的語1-名詞--名詞」となります。この時「名詞--名詞」が目的語2となります。長い目的語ほど後ろに置かれる傾向がありますから。

 

B前置詞-名詞--名詞。→この時、「名詞--名詞」がこれは前置詞句として、基本文型の文頭・述前・文尾のいずれかに挿入することとなります。

 

例1:倶日本人也。(「主語[名詞--名詞]-副詞-述語-終助詞」)

訓読:()倶に日本人なり。

訳:お前()どちらも日本人である。

 

例2:聖王必慈也。(「主語-副詞-述語[他動詞-名詞--名詞]-終助詞」)

訓読:聖王必ずとを慈しむなり。

訳:聖王は必ず臣下人民とを慈しむのだ。

 

例3:男授其子焉。(「主語-述語[=授与動詞-目的語1-目的語2[名詞--名詞]]-終助詞」)

訓読:男 其の子にとを授く。

訳:男はその子にとを授けた。

 

例4:神以作人耳。(「主語-前置詞句[前置詞-名詞--名詞]-述語-終助詞」)

訓読:神 を以て人を作るのみ。

訳:神はでもって人を作ったのだ。

 

 因みに、「与」と全く同じように使える言葉に「及」があります。これは現代日本語のように「及び」と訓読することもできますが、漢文としては「及[]」とも訓読できます。

 

例1:及び倶日本人也。(「主語[名詞--名詞]-副詞-述語-終助詞」)

訓読:()倶に日本人なり。/及び()倶に日本人なり。

訳:お前()どちらも日本人である。/及びお前()どちらも日本人である。

 

例2:聖王必慈也。(「主語-副詞-述語[他動詞-名詞--名詞]-終助詞」)

訓読:聖王必ずとを慈しむなり。/聖王必ず及び慈しむなり。

訳:聖王は必ず臣下人民とを慈しむのだ。/聖王は必ず臣下及び人民慈しむのだ。

 

例3:男授其子焉。(「主語-述語[=授与動詞-目的語1-目的語2[名詞--名詞]]-終助詞」)

訓読:男 其の子にとを授く。/男 其の子に及び授く。

訳:男はその子にとを授けた。/男はその子に及び授けた。

 

例4:神以作人耳。(「主語-前置詞句[前置詞-名詞--名詞]-述語-終助詞」)

訓読:神 を以て人を作るのみ。/神 及びを以て人を作るのみ。

訳:神はでもって人を作ったのだ。/神は及びでもって人を作ったのだ。

 

練習問題11:次の接続詞「与」を含む漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)   父与子並修仁徳。

(2)   我以弓与矢射獣。

(3)   男残財子与妻。

(4)   隠者独愛詩与書。

 

練習問題12:次の書き下し文を、接続詞「与」を含む漢文に復元してみよう。

(1)   我と彼とは倭人なり。

(2)   国王 鉄と血とを好む。

(3)   我 父と母とに銭を送ること十余万。

(4)   男 子と妻との為に市に赴[おもむ]きて物を売る。

 

練習問題13:次の接続詞「及」を含む漢文を、訓読・翻訳してみよう。

(1)   父及子並修仁徳。

(2)   我以弓及矢射獣。

(3)   男残財子及妻。

(4)   隠者独愛詩及書。

 

練習問題14:次の書き下し文を、接続詞「与」を含む漢文に復元してみよう。

(1)   我及び彼は倭人なり。

(2)   国王 鉄及び血を好む。

(3)   我 父及び母に銭を送ること十余万。

(4)   男 子及び妻の為に市に赴[おもむ]きて物を売る。

 

以上、第1課から第8課までにおいて、漢文の原則は勉強しました。

 

漢文は概ね皆この原則によって構成されています。ですが、万事原則有る処に必ず例外なる者有り、やはり例外というのも結構あるものなのであります。

 

ってなわけで次回からはその例外に当たる文型について勉強していきたいと思います。うむ、なかなかに険しいですな、漢文道!

 

 

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